リファラル採用のルールの作り方|報酬と選考の線を決める
社員に「知り合いを紹介してほしい」と声をかけること自体は、多くの会社でやっています。ただ、謝礼をいくら出すか、不採用のときにどう伝えるかを決めないまま始めると、途中で止まります。
一般には、謝礼の扱いを就業規則で定め、選考は通常どおり行い、結果の伝え方まで決めておく形が採られています。この記事では、リファラル採用のルールの作り方を、法令との関係から謝礼、選考、伝え方までの順に整理します。
この記事の内容(9項目)
- リファラル採用で先に決める4つ
- 謝礼から決めない
- 謝礼と職業安定法の関係
- 実務で採られている形
- 金額より、条件をはっきりさせる
- 選考は通常どおり行う
- 選考の流れは変えない
- 紹介者を選考に関わらせない
- 選考の記録は通常どおり残す
- 不採用のときの伝え方
- 紹介者に理由を伝えない
- 本人への連絡は、こちらから直接する
- 紹介してくれたこと自体に礼を言う
- 紹介の管理表で持つもの
- 紹介されたが応募に至らなかった件も残す
- 支給予定日で並べ替える
- リファラル採用が止まる3つの原因
- その1:社員が何を紹介すればよいか分からない
- その2:紹介した後の状況が分からない
- その3:条件が合う人が周りにいない
- 知り合いを紹介する側の負担を考える
- 面談から始める形にする
- 紹介を評価に結びつけない
- 制度を社内に伝えるときの書き方
- 1枚に入れる6つ
- いちばん読まれるのは、募集している職種の欄
- 配る時期を決めておく
- 紹介の窓口を1つにする
- よくある質問
リファラル採用で先に決める4つ
リファラル採用のルールで決めることは、次の4つです。謝礼の金額を決める前に、選考と伝え方を決めておくほうが、後で揉めません。
謝礼から決めない
制度を作るとき、いくら出すかの話から始まりがちです。ただ、紹介が止まる原因の多くは金額ではなく、不採用のときの気まずさです。ここを先に決めておくと、社員が紹介しやすくなります。
謝礼と職業安定法の関係
社員に紹介の謝礼を支払うときは、職業安定法40条との関係を確認する必要があります。同法は、労働者の募集に従事する者に対して報酬を与えることを、原則として禁じています。
実務で採られている形
| 決めること | 実務で見られる形 |
|---|---|
| 支払いの位置づけ | 賃金として、就業規則(賃金規程)に定めて支払う |
| 支給の条件 | 紹介した人が採用され、一定期間在籍したとき |
| 支給の時期 | 入社から3か月後、6か月後など |
| 金額 | 職種や採用の難しさで差を付ける会社がある |
| 予算上の費目 | 募集費ではなく人件費として置く会社がある |
就業規則を変更する場合、常時10人以上の労働者を使用する事業場では、周知と行政官庁への届出が必要になります。手続きは社会保険労務士にご確認ください。予算への置き方は採用予算の決め方にまとめています。
金額より、条件をはっきりさせる
「入社したら支給」なのか「3か月在籍したら支給」なのかが曖昧だと、支払う段になって揉めます。条件が書かれていない制度は、1件目で止まります。金額の大小より、条件が書いてあることのほうが効きます。
選考は通常どおり行う
リファラル採用でいちばん気をつけるのは、紹介だからという理由で選考を甘くしないことです。甘くすると、入社後に本人も周りも困ります。
選考の流れは変えない
変えてよい
書類の提出のしかた面接の日程の融通
会社の説明の省略(すでに聞いている)
手続きの部分
変えてはいけない
評価の基準必須要件の判定
合否の決め方
判断の部分
紹介で来た人は、すでに社員から会社の話を聞いています。そのぶん説明の時間を短くしてよいのですが、評価の基準は同じにしてください。基準の作り方は面接の評価基準の作り方にまとめています。
紹介者を選考に関わらせない
紹介した社員が面接官になると、判断が客観的でなくなります。紹介者は選考に入らない、と決めておくと、結果を伝えるときも説明がしやすくなります。
選考の記録は通常どおり残す
紹介だからといって記録を省くと、不採用のときに説明ができません。書類選考の記録の残し方は書類選考の基準の作り方にまとめています。
不採用のときの伝え方
リファラル採用が続くかどうかは、不採用のときにどう伝えたかで決まります。ここで気まずくなると、その社員は二度と紹介しません。
紹介者に理由を伝えない
不採用の理由を紹介者に伝えると、応募者本人の情報を、本人の同意なく第三者に伝えることになります。実務では、紹介者には結果だけを伝え、理由は伝えない形が一般的です。これを制度の説明に書いておくと、紹介者も納得できます。
本人への連絡は、こちらから直接する
結果を紹介者経由で伝えると、紹介者が板ばさみになります。本人への連絡は採用担当が直接行うと決めてください。伝え方は選考連絡の期限の決め方にまとめています。
紹介してくれたこと自体に礼を言う
不採用でも、紹介してくれた行為への礼は伝えてください。「今回は縁がありませんでしたが、声をかけていただいてありがとうございました」の1言があるかどうかで、次の紹介が変わります。
紹介の管理表で持つもの
紹介が数件を超えると、誰が誰を紹介したか、謝礼をいつ払うかが分からなくなります。1件1行で持ってください。
| 列 | 役割 |
|---|---|
| 紹介者 | 謝礼の支払先。所属も書く |
| 候補者 | 採用管理表の受付番号と対応させる |
| 紹介日 | 紹介から応募までの日数を見る |
| 応募の有無 | 紹介されたが応募に至らなかった件も残す |
| 選考の結果 | 採用/不採用/辞退 |
| 謝礼の条件 | 金額と支給の条件(在籍◯か月など) |
| 支給予定日と支給日 | 払い忘れを防ぐ |
紹介されたが応募に至らなかった件も残す
声はかけたが応募しなかった、という件を残しておくと、制度が動いているのに応募につながっていないことが見えます。原因は、条件が合わない、タイミングが合わないのどちらかであることが多く、後者なら次の募集で声をかけられます。残し方は人材プールの作り方にまとめています。
支給予定日で並べ替える
「3か月在籍したら支給」という条件にすると、支払いは入社の3か月後です。忘れると信用を失います。支給予定日の列で並べ替えて、月に1回確認してください。
リファラル採用が止まる3つの原因
制度を作ったのに紹介が出ない、あるいは最初だけで止まるとき、原因はだいたい次の3つです。
その1:社員が何を紹介すればよいか分からない
「誰か紹介して」だけでは、社員は動けません。いま募集している職種、仕事の中身、どういう人が合うかを、社員が説明できる形で渡す必要があります。求人票をそのまま社内に共有するだけでも変わります。
その2:紹介した後の状況が分からない
紹介したきり何の連絡も無いと、社員は「どうなったのだろう」と気にし続けます。選考が進んでいることだけでも紹介者に伝えると、次の紹介につながります。伝えるのは進捗までで、評価の中身は伝えません。
その3:条件が合う人が周りにいない
これは制度の問題ではありません。社員の人間関係の範囲に、募集している職種の人がいないという状態です。この場合、謝礼を上げても紹介は増えません。他の経路を使ってください。判断は採用の効果測定の数字で行います。
知り合いを紹介する側の負担を考える
社員から見ると、紹介には断られるかもしれない、不採用になったら気まずいという負担があります。制度を設計するときに、この負担を減らす工夫が要ります。
| 負担 | 減らし方 |
|---|---|
| いきなり応募を勧めにくい | まずカジュアル面談に来てもらう形を用意する |
| 条件を自分で説明できない | 社員が渡せる資料(求人票、社内向けの案内)を作る |
| 不採用になったら気まずい | 結果の連絡は会社から直接、理由は伝えないと決めておく |
| 紹介したのに放置される | 選考が進んでいることを紹介者に伝える |
面談から始める形にする
「応募してほしい」ではなく「一度話を聞きに来ませんか」なら、社員も声をかけやすくなります。カジュアル面談を用意しておくと、紹介のハードルが下がります。進め方はカジュアル面談の進め方にまとめています。
紹介を評価に結びつけない
紹介の件数を人事評価に入れると、条件に合わない人まで紹介されることになります。制度の目的は件数ではなく、合う人に出会うことです。件数の目標を社員に課さないでください。
制度を社内に伝えるときの書き方
制度を作っても、社員が内容を知らなければ紹介は出ません。社内へ配る案内は、A4で1枚に収めるのが現実的です。長い規程をそのまま配っても読まれません。
1枚に入れる6つ
- いま募集している職種。仕事の中身を2行程度で。求人票へのリンクか掲示場所も書きます
- 紹介の手順。誰に、どうやって伝えればよいか。窓口を1つに決めます
- 選考の進み方。通常の選考と同じ基準で行うこと
- 結果の伝わり方。本人へは会社から直接。紹介者には結果のみで理由は伝えないこと
- 謝礼の金額と条件。いつ、いくら、どういう条件で支給されるか
- 問い合わせ先。迷ったときに聞ける相手
いちばん読まれるのは、募集している職種の欄
社員は、制度の説明よりいま何を募集しているかを知りたがっています。ここが古いままだと、制度そのものが動いていないと受け取られます。募集が変わったら、案内も差し替えてください。掲載内容の版の持ち方は求人票の管理にまとめています。
配る時期を決めておく
1回配って終わりにすると、入社した人には伝わりません。新しい募集を始めたときと、半年に1回の2つのタイミングで配り直すと、制度が生き続けます。朝礼や社内の掲示でも構いません。
紹介の窓口を1つにする
「上司に言ってもいいし、人事に言ってもいい」という形にすると、伝わったかどうかが分からなくなります。窓口を1人か1つの部署に決めて、そこに来た件を管理表に必ず記録すると、件数が数えられるようになります。
よくある質問
- Q. 社員に紹介の謝礼を払うのは違法ではありませんか?
- 職業安定法40条は、労働者の募集に従事する者に対して報酬を与えることを原則として禁じています。実務では、就業規則に定めたうえで賃金として支払う形が一般的とされていますが、自社の制度が要件を満たすかどうかは、社会保険労務士または都道府県労働局にご確認ください。この記事では適否の判断をしていません。
- Q. 謝礼はいくらが相場ですか?
- 金額の相場より、支給の条件がはっきり書かれていることのほうが制度の運用に効きます。「入社したら」なのか「3か月在籍したら」なのかが曖昧だと、支払う段になって揉めます。金額の可否については社会保険労務士にご確認ください。
- Q. 紹介された人の選考は、通常と変えてよいですか?
- 手続きの部分は変えて構いませんが、評価の基準と合否の決め方は変えないでください。甘くすると、入社後に本人も周りも困ります。すでに会社の説明を聞いているぶん、面接での説明時間を短くする程度にとどめてください。
- Q. 不採用の理由を紹介者に伝えてよいですか?
- 伝えないでください。応募者本人の情報を、本人の同意なく第三者に伝えることになります。紹介者には結果だけを伝え、理由は伝えないと制度の説明に書いておくと、紹介者も納得できます。
- Q. 制度を作ったのに紹介が出ません。何が原因ですか?
- 社員が何を紹介すればよいか分からない、紹介した後の状況が分からない、そもそも条件が合う人が周りにいない、のどれかです。3つ目なら謝礼を上げても増えないので、他の経路を使ってください。判断は効果測定の数字で行います。
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