早期離職の原因の調べ方|聞き取りを募集に戻す
採用にかけた時間と費用が、入社から数か月で消えてしまう。早期離職がいちばん痛いのはここです。ただ、原因を「ミスマッチ」で片付けると、次の募集で何を直せばよいか分かりません。
一般には、辞める人から理由を聞き取り、区分に分けて数え、募集要件や受け入れの側に戻す形が採られています。この記事では、早期離職の原因の調べ方を、聞き取りの時期から聞き方、区分、戻し方までの順に整理します。
この記事の内容(9項目)
- 早期離職の原因は、3か所のどこかにある
- 原因を1つに決めない
- 「本人の問題」で終わらせない
- 聞き取りの時期
- 引き止めないと伝えてから聞く
- 聞く人を変える
- 短くてよい
- 何を聞くか
- 3つ目がいちばん使える
- 聞いてはいけないこと
- 答えたくないと言われたら、そこで止める
- 理由を区分に分けて数える
- 「思っていた仕事と違った」が多いとき
- 「教育」が多いとき
- 「体力・環境」が多いとき
- 在籍期間で分けて見る
- 1週間以内の離職は、募集の書き方を疑う
- 3か月以内の離職は、試用期間の運用を疑う
- 募集要件に戻す
- 募集要項に足す
- 面接で確認する項目に足す
- 不採用理由の集計と突き合わせる
- 直せないものは、数えるだけにする
- 数が少なくても記録する
- 3年分たまると傾向が出る
- 学校や紹介会社に説明する材料になる
- 採用計画の必要人数に反映する
- 記録した個人情報の扱い
- 見られる人の範囲を決める
- 共有するときは、個人が分からない形にする
- 保管の期間を決める
- 聞き取りの目的を本人に伝える
- よくある質問
早期離職の原因は、3か所のどこかにある
早期離職の原因は、いろいろあるように見えて、採用の3つの段階のどこかにたどり着きます。
この3つのうち、いちばん多く出てくるのは3つ目の受け入れです。採用の問題として扱われがちですが、実際には入社後の数週間で起きていることが多くあります。
原因を1つに決めない
1人の離職には、たいてい複数の理由が重なっています。1人の話から原因を断定せず、何人か分をためてから傾向を見てください。人数が少ない会社でも、3年分ためれば形が見えます。
「本人の問題」で終わらせない
「続かない人だった」で片付けると、次の募集で何も変わりません。本人の問題に見える場合でも、選考で見抜けなかったのはなぜかを1つは書いてください。そこが選考の改善点になります。
聞き取りの時期
聞き取りは、辞めることが決まってから、退職日までの間に行うのが一般的です。時期によって、出てくる話がまったく変わります。
| 時期 | 出てくる話 | 使えるか |
|---|---|---|
| 辞めたいと相談された時点 | 引き止められないための当たり障りのない理由 | そのままでは使いにくい |
| 辞めることが決まった後 | 実際の理由が出やすい | いちばん使える |
| 退職日の当日 | 時間が無い。形式的になる | 使いにくい |
| 退職から1か月後 | 落ち着いた話が聞ける。連絡が取れないことも | 可能なら |
引き止めないと伝えてから聞く
引き止めるために聞いていると思われると、本当の理由は出てきません。「引き止めるためではなく、今後の参考のために伺っています」と先に言うだけで、話の中身が変わります。
聞く人を変える
直属の上司が聞くと、人間関係が理由の場合に出てきません。採用担当や、直接の指揮命令にない人が聞くほうが、実際の理由が出やすくなります。
短くてよい
1時間の面談を組もうとすると、日程が合わずに流れます。15分で3つ聞くと決めておけば、退職日までに必ず実施できます。
何を聞くか
聞くことは3つで足ります。多く聞くほど、答えが薄くなります。
- 決め手になったことは何でしたか。いちばん大きい理由を1つ
- 入社前に聞いていた話と違ったことはありましたか。募集の側に戻せます
- 会社が何をしていれば、続けられたと思いますか。受け入れの側に戻せます
3つ目がいちばん使える
「何をしていれば続けられたか」は、そのまま次にやることの候補になります。「最初の1か月、誰かに聞ける状態だったら」といった答えが出れば、教育の担当を置く話につながります。
聞いてはいけないこと
次の勤務先や、転職先の条件を聞き出そうとしないでください。本人が話す範囲で聞くにとどめます。他の社員の評判を聞き出すのも避けてください。聞き取りの目的から外れます。
答えたくないと言われたら、そこで止める
無理に聞くと、退職後の会社の評判に影響します。「未回答」として記録に残せば、それも情報です。未回答が続くなら、聞く人や時期を変えてみてください。
理由を区分に分けて数える
聞き取った内容は、そのままでは使えません。区分に分けて、どこに集中しているかを見ます。
| 区分 | 実際に出る言葉 | 戻す先 |
|---|---|---|
| 仕事の中身 | 思っていた仕事と違った | 募集要項、面接での説明 |
| 労働条件 | 残業が多い、休みが取れない、給与 | 募集要項、実態の見直し |
| 教育 | 教えてもらえなかった、聞ける人がいなかった | 受け入れの体制 |
| 人間関係 | 職場の雰囲気、特定の相手 | 配置、現場の運営 |
| 体力・環境 | 暑さ、寒さ、重量物、立ち仕事 | 募集要項に書く、見学で見せる |
| 本人の事情 | 家庭、健康、引っ越し | 直せない。数だけ数える |
「思っていた仕事と違った」が多いとき
この区分が半分を超えているなら、募集要項と面接での説明に手を入れるのがいちばん効きます。仕事の中身を1日の流れで書く方法は募集要項の書き方にまとめています。
「教育」が多いとき
採用の問題ではありません。教える人を決めていない、教える時間を確保していない、のどちらかです。受け入れの準備は入社受け入れの準備にまとめています。
「体力・環境」が多いとき
募集の段階で書いていないか、書いていても伝わっていません。職場見学を選考の前に入れると、この区分の離職は大きく減ります。受け入れ方は職場見学の受け入れにまとめています。
在籍期間で分けて見る
同じ早期離職でも、1か月で辞めた人と6か月で辞めた人では原因が違います。在籍期間で分けて数えてください。
| 在籍期間 | 多い原因 | 手を打つ場所 |
|---|---|---|
| 1週間以内 | 初日の対応、想像との差が大きい | 受け入れの初日、募集の書き方 |
| 1か月以内 | 教える人がいない、相談できない | 教育の担当を置く |
| 3か月以内 | できるようにならない、評価されない | 試用期間中の面談 |
| 6か月から1年 | 条件、人間関係、将来の見通し | 条件の実態、配置 |
1週間以内の離職は、募集の書き方を疑う
入社して数日で辞めるのは、来てみたら話が違ったという状態です。この場合、選考ではなく募集の書き方に原因があります。きつい部分を書いていないことが多くあります。
3か月以内の離職は、試用期間の運用を疑う
できるようにならないまま放置されると、本人から辞めることになります。試用期間中の面談をやっていれば、途中で気づけます。面談の時期と話すことは試用期間の使い方と本採用の判断にまとめています。
募集要件に戻す
集めた理由を、次の募集に反映するところまでやって完成します。戻し方は、区分ごとに決まっています。
募集要項に足す
「思っていた仕事と違った」「体力的にきつかった」が出ているなら、その内容を募集要項に書き足してください。応募数は減りますが、来る人が変わります。
面接で確認する項目に足す
離職の理由になったことを、面接で確認する項目に足します。「屋外の作業がありますが、ご対応いただけますか」といった、業務の条件としての聞き方にしてください。聞き方の線は面接で聞いてはいけない質問にまとめています。
不採用理由の集計と突き合わせる
不採用の理由と、離職の理由を並べて見ると、要件が合っているかどうかが分かります。不採用が多く離職も多いなら、要件そのものが実態と離れています。集計のしかたは不採用理由の集計のしかたにまとめています。
直せないものは、数えるだけにする
家庭の事情や引っ越しは、こちらでは動かせません。直せない理由に時間を使わないために、区分を分けておきます。直せる区分の合計が全体の何割かが分かると、取り組む価値の大きさも見えます。
数が少なくても記録する
年に1人か2人の離職では、統計にはなりません。それでも記録する価値があります。
3年分たまると傾向が出る
1年に2人でも、3年で6人です。6人のうち4人が同じ理由なら、それは傾向です。記録していなければ、3年後には誰も覚えていません。
学校や紹介会社に説明する材料になる
高卒採用では、送り出した生徒が続いているかを先生が見ています。数字と、それに対して何を変えたかを話せると、翌年の紹介につながります。詳しくは高卒採用の学校訪問にまとめています。
採用計画の必要人数に反映する
離職の見込みを入れずに採用計画を作ると、毎年足りなくなります。前年の離職率が分かれば、採用予定数に上乗せできます。計画への入れ方は採用計画の立て方にまとめています。
記録した個人情報の扱い
聞き取りの記録には、退職した人の個人情報と、率直な意見が含まれます。扱いを決めておかないと、社内で読まれて本人が困ります。
見られる人の範囲を決める
聞き取った内容をそのまま社内で共有すると、本人が特定できる形で意見が広まります。次に辞める人は、何も話さなくなります。見られる人を採用担当と経営に限る、といった線を引いてください。
共有するときは、個人が分からない形にする
現場に改善を求めるときは、「3年間で、教育を理由にした離職が4件ありました」という形にします。誰が言ったかを伝える必要はありません。区分と件数だけで、話は進みます。
保管の期間を決める
退職した人の記録を、いつまで持っておくかを決めてください。集計に使う期間(3年など)を過ぎたものは、氏名を消して区分と件数だけ残す形も採れます。個人情報の扱いの考え方は応募書類の保管と返却にまとめています。
聞き取りの目的を本人に伝える
何のために聞いていて、どう使うのかを先に伝えてください。「次の募集の書き方を直すために使います」と言えば、協力してもらいやすくなります。目的を伝えずに聞くと、警戒されて中身が出てきません。
よくある質問
- Q. 退職する人に、いつ理由を聞けばよいですか?
- 辞めることが決まった後、退職日までの間がいちばん実際の理由が出やすい時期です。辞めたいと相談された時点では、引き止められないための当たり障りのない理由になりがちです。15分で3つ聞くと決めておけば、退職日までに必ず実施できます。
- Q. 聞き取りは誰がやるのがよいですか?
- 直属の上司以外が望ましいです。上司が聞くと、人間関係が理由の場合に出てきません。採用担当や、直接の指揮命令にない人が聞くほうが、実際の理由が出やすくなります。
- Q. 理由を答えてもらえないときはどうしますか?
- 無理に聞かないでください。退職後の会社の評判に影響します。「未回答」として記録に残せば、それも情報です。未回答が続くなら、聞く人や時期を変えてみてください。
- Q. 年に1人か2人しか辞めないのですが、記録する意味はありますか?
- あります。1年に2人でも3年で6人になり、そのうち4人が同じ理由なら傾向です。記録していなければ、3年後には誰も覚えていません。高卒採用では、学校に説明する材料にもなります。
- Q. 聞き取った内容を、現場に共有してよいですか?
- 個人が特定できない形にしてください。「3年間で、教育を理由にした離職が4件ありました」という形で、区分と件数だけを伝えます。誰が言ったかが分かる形で共有すると、次に辞める人は何も話さなくなります。
この記事で使う無料テンプレート
あわせて読みたい記事
本記事は一般的な業務の進め方を整理したものです。社内規程、契約条件、法令上の要件がある場合は、それらを優先してご確認ください。記事の内容は2026-08-30時点のものです。