応募書類の保管と返却|期間の決め方と削除の手順
不採用になった人の履歴書が、机の引き出しに何年分もたまっている。あるいは、どこにあるか分からない。応募書類の保管では、どちらもよく見る状態です。
調べると「最低5年」と書いてある記事と「3か月から6か月」と書いてある記事が両方出てきて、混乱します。これは採用した人の書類と、不採用になった人の書類が別の話だからです。この記事では、応募書類の保管を、法令上の扱いから利用目的、返却と削除の分け方までの順に整理します。
この記事の内容(9項目)
- 採用した人と、不採用の人で扱いが違う
- 「履歴書は5年」と書かれている理由
- 不採用の人の書類は、必要な期間だけ持つ
- 期間を決めたら、社内の規程に書く
- 利用目的を先に決める
- 返却するかどうかを決める
- 募集要項に書いたとおりにする
- 不採用の連絡に1行入れる
- 削除と廃棄のやり方
- 紙の書類
- データの書類
- コピーを作らない
- 廃棄の記録を残す
- 保管の管理表で持つもの
- 処分予定日で並べ替える
- 採用した人の書類は別に移す
- 選考が途中で止まった人
- 再応募と人材プールを考えるなら、同意を取る
- 不採用の連絡で確認する
- 同意を得た人と、そうでない人を分けて持つ
- 再応募の照合に使う場合
- 同意の期限も決める
- 要配慮個人情報が含まれていたとき
- 求めていない情報が書かれていた場合
- こちらから求める場合
- 見られる人の範囲を絞る
- 社内で決めることを1枚にまとめる
- 採用に関わる全員に配る
- 年に1回、実態を確認する
- よくある質問
採用した人と、不採用の人で扱いが違う
応募書類の保管を1つのルールで決めようとすると、必ず無理が出ます。採用したかどうかで、根拠になる法令が変わります。
採用した人の書類
労働基準法109条の「雇入れに関する書類」として、保存の対象になり得る期間は5年(経過措置により当分の間3年)
起算日は退職または死亡の日
雇用の記録として持つ
不採用の人の書類
保存を義務づけた法令は無い個人情報保護法は、利用する必要が無くなった個人データを遅滞なく消去するよう努めることを求めている
持ち続ける理由のほうを説明する
「履歴書は5年」と書かれている理由
労働基準法109条は、労働者名簿、賃金台帳、雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を5年間保存することを求めています(経過措置により当分の間3年)。採用した人の履歴書を「雇入れに関する書類」として扱う運用があるため、5年という数字が出てきます。不採用の人の書類の話ではありません。
不採用の人の書類は、必要な期間だけ持つ
保存の義務が無いなら、すぐ捨ててよいかというと、そうでもありません。持っておく実務上の理由がある期間だけ持つ、という考え方になります。
| 持っておく理由 | 必要な期間の目安 |
|---|---|
| 問い合わせへの回答(選考の経緯を説明する) | 選考終了から数か月 |
| 再応募があったときの照合 | 再応募を受け付ける期間に合わせる |
| 次の募集で声をかける(本人の同意がある場合) | 同意を得た期間まで |
| 採用選考に関する社内の記録 | 社内の規程で決めた期間 |
実務では、不採用者の応募書類を3か月から6か月程度で廃棄するとしている会社が多くあります。ただしこれは法令上の期間ではなく、上のような実務の理由から置かれた目安です。
期間を決めたら、社内の規程に書く
担当の判断で捨てたり残したりしていると、同じ立場の応募者で扱いが違うことになります。期間を決めて、規程かマニュアルに書いてください。決めていない状態がいちばん危ないです。
利用目的を先に決める
個人情報保護法は、個人情報を取得するときに利用目的を特定し、本人に通知または公表することを求めています。応募の受付ページや募集要項に、利用目的を書いておいてください。「採用選考のため」だけでなく、次の募集で連絡する可能性があるなら、その旨も書く必要があります。
返却するかどうかを決める
応募書類の返却について、返却を義務づけた法令はありません。返す会社も、返さずに責任を持って廃棄する会社も、どちらもあります。
| 方針 | やること | 負担 |
|---|---|---|
| 返却する | 不採用の連絡と一緒に郵送する。返送用の封筒と切手が要る | 費用と手間がかかる |
| 返却しない(廃棄する) | 責任を持って廃棄することを募集要項と不採用の連絡に明記する | 負担は小さい |
| 希望者に返却する | 不採用の連絡に返却を希望するかを書く | 件数によっては手間が増える |
募集要項に書いたとおりにする
いちばん大事なのはここです。募集要項に「返却します」と書いたなら、そのとおりにしてください。書いておきながら返さないと、問い合わせと不信につながります。返さない方針なら、その旨を書きます。
不採用の連絡に1行入れる
不採用の連絡の中で、書類をどう扱うかを1行書いてください。これがあるだけで、問い合わせが減ります。連絡の書き方は選考連絡の期限の決め方にまとめています。
削除と廃棄のやり方
期間が来たら、実際に消します。消したことを記録に残すところまでが手順です。
紙の書類
- 裁断または溶解で、内容が読み取れない形にします
- 一般のごみとして出さない。回収を業者に委託する場合は、処理の証明を受け取ります
- 廃棄した日と、対象の件数を記録に残します
データの書類
- メールの添付ファイル、共有フォルダ、パソコンのダウンロードフォルダをすべて確認します
- ごみ箱からも削除します
- バックアップに残っている場合の扱いを、情報システムの担当と決めておきます
いちばん残りやすいのは、メールの添付ファイルです。共有フォルダだけ消して安心していると、担当者のメールボックスに何年分も残っています。
コピーを作らない
選考のために書類を印刷して面接官に配ると、回収しなければコピーが増えます。面接の後に回収する、あるいは画面で見てもらう形にすると、消す作業が1か所で済みます。
廃棄の記録を残す
いつ、何件を、どうやって処分したかを1行残しておくと、後から確認できます。個別の氏名を残す必要はありません。「2026年8月分の不採用者12件を裁断処理」で足ります。
保管の管理表で持つもの
書類がどこにあって、いつ処分するかを1枚で持ちます。期限が来たものが見える形にするのが目的です。
| 列 | 役割 |
|---|---|
| 受付番号 | 採用管理表と対応させる。氏名は最小限にする |
| 受領日 | 保管期間の起点 |
| 書類の種類 | 履歴書、職務経歴書、その他 |
| 形式 | 紙/データ。両方ある場合は両方書く |
| 保管場所 | キャビネットの段、フォルダのパス |
| 選考の結果 | 採用/不採用/辞退。扱いが分かれる |
| 処分の予定日 | 決めた期間を足した日 |
| 処分日と方法 | 実際に処分した記録 |
処分予定日で並べ替える
月に1回、処分予定日で並べ替えて、期日が来たものを処分します。この作業を月次に組み込まないと、書類はたまり続けます。
採用した人の書類は別に移す
採用が決まった時点で、その人の書類は採用選考の書類から、従業員の記録へ移します。置き場所も分けてください。混ざっていると、不採用者の書類を処分するときに一緒に消すおそれがあります。
選考が途中で止まった人
会社の都合で募集を止めた場合や、連絡が取れなくなった場合の扱いも決めておいてください。宙に浮いた書類がいちばん長く残ります。募集を止めたときの手順は選考中止の連絡のしかたにまとめています。
再応募と人材プールを考えるなら、同意を取る
次の募集で声をかけたい人がいる場合、本人の同意がないまま連絡先を持ち続けないでください。
不採用の連絡で確認する
いちばん自然なのは、不採用の連絡の中で確認する形です。「今後の募集の際にご連絡してもよろしいでしょうか」と1行入れて、返信をもらいます。返信があった人だけを残します。
同意を得た人と、そうでない人を分けて持つ
同じ表に混ぜていると、連絡してよい人が分からなくなります。同意の有無を1列持つか、置き場所を分けてください。人材プールの作り方は人材プールの作り方にまとめています。
再応募の照合に使う場合
再応募を受け付ける方針なら、前回の記録が要ります。ただし、書類そのものを持ち続ける必要はありません。受付番号、応募日、選考の結果、理由の区分だけを残せば照合できます。方針の決め方は再応募の受け付け方にまとめています。
同意の期限も決める
「今後の募集の際に連絡してよい」という同意も、無期限ではありません。1年、2年といった期限を伝えたうえで同意をもらうと、その後の扱いが決まります。
要配慮個人情報が含まれていたとき
応募書類に、病歴や障害に関する記載が本人の判断で書かれていることがあります。これらは要配慮個人情報にあたるものを含み、取得には原則として本人の同意が要ります。
求めていない情報が書かれていた場合
こちらから求めていないのに書かれていた場合も、受け取った以上は適切に扱う必要があります。業務に必要な範囲を超えて選考の材料にしないでください。
こちらから求める場合
業務上の合理的な必要性があって健康の状況を確認する場合は、その必要性を説明できる状態にしておいてください。厚生労働省の「公正な採用選考の基本」では、合理的・客観的な必要性が認められない健康診断の実施が、配慮すべき事項として挙げられています。詳しくは面接で聞いてはいけない質問にまとめています。
見られる人の範囲を絞る
応募書類を面接官全員に配ると、必要のない人まで内容を見ることになります。見る必要がある人だけに渡すという運用にしてください。
社内で決めることを1枚にまとめる
ここまでの内容を、社内で決めておく形に整理します。1枚に書いて、採用に関わる人に配ってください。
| 決めること | 書き方の例 |
|---|---|
| 利用目的 | 採用選考のために利用する。募集要項と応募フォームに記載する |
| 不採用者の保管期間 | 選考終了から◯か月。期間経過後は裁断処理する |
| 返却の方針 | 返却しない(責任を持って廃棄する)。希望があれば返却する |
| 採用者の書類 | 従業員の記録へ移す。保存期間は労務の規程に従う |
| 保管の場所 | 紙は施錠できるキャビネット。データは共有フォルダの指定の場所 |
| 見られる人 | 採用担当と、その選考に関わる面接官まで |
| 処分の確認 | 月1回、処分予定日が過ぎたものを確認して処分する |
| 同意を得た場合の扱い | 次回の連絡についての同意がある人は、別の場所で◯年まで保持する |
採用に関わる全員に配る
採用担当だけが知っていても、面接官が印刷した書類を机に置いたままにしていれば同じことです。面接をする人にも配ってください。
年に1回、実態を確認する
決めたとおりに運用されているかを、年に1回確認してください。キャビネットを開けて、処分予定日を過ぎた書類が残っていないかを見るだけで足ります。ここで残っていたら、月次の確認が回っていません。
よくある質問
- Q. 応募書類は何年保管すればよいですか?
- 一律の年数では決められません。不採用になった人の応募書類に、保存を義務づけた法令はありません。一方、採用した人の書類は労働基準法109条の「雇入れに関する書類」として保存の対象になり得ます(5年、経過措置により当分の間3年)。個別の判断は社会保険労務士または都道府県労働局にご確認ください。
- Q. 不採用者の履歴書は、すぐ捨ててよいですか?
- 保存の義務はありませんが、問い合わせへの回答や再応募の照合といった実務上の理由がある期間は持つのが一般的です。実務では3か月から6か月程度としている会社が多くあります。期間を決めて、社内の規程に書いてください。決めていない状態がいちばん危ない形です。
- Q. 応募書類は返却しなければなりませんか?
- 返却を義務づけた法令はありません。ただし、募集要項に返却すると書いたなら、そのとおりにしてください。返さない方針なら、責任を持って廃棄することを募集要項と不採用の連絡に明記してください。
- Q. データで受け取った応募書類は、どこを消せばよいですか?
- メールの添付ファイル、共有フォルダ、パソコンのダウンロードフォルダをすべて確認し、ごみ箱からも削除してください。いちばん残りやすいのはメールの添付ファイルです。共有フォルダだけ消しても、担当者のメールボックスに残っています。
- Q. 次の募集で連絡したい人の書類は、持ち続けてよいですか?
- 本人の同意が要ります。不採用の連絡の中で「今後の募集の際にご連絡してもよろしいでしょうか」と確認し、返信があった人だけを残してください。同意にも1年、2年といった期限を伝えたうえでもらうと、その後の扱いが決まります。
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