応募書類の保管期間|不採用者の書類は何年?法令の根拠と決め方
不採用になった人の履歴書が、机の引き出しに何年分もたまっている。あるいは、どこにあるか分からない。応募書類の保管期間を決めていない会社では、どちらもよく見る状態です。
応募書類の保管期間を調べると、「最低5年」と書いてある記事と「数か月で廃棄」と書いてある記事が両方出てきて、混乱します。これは採用した人の書類と、不採用になった人の書類で、もとになる法令が違うからです。この記事では、応募書類の保管期間を、法令上の扱い(個人情報保護法・職業安定法・労働基準法)から、期間の決め方、返却と消去の手順までの順に整理します。
この記事の内容(12項目)
- 応募書類の保管期間は、採用した人と不採用の人で分かれる
- 「履歴書は5年」と書かれている理由
- 応募書類の保管期間を「何年」と定めた法令はない
- 募集する会社には職業安定法の決まりもかかる
- 不採用者の応募書類の保管期間は、必要な期間だけ
- 期間を決めたら、社内の規程に書く
- 利用目的を先に決める
- 返却するかどうかを決める
- 募集要項に書いたとおりにする
- 不採用の連絡に1行入れる
- 保管期間が過ぎた応募書類の削除と廃棄
- 紙の書類
- データの書類
- コピーを作らない
- 廃棄の記録を残す
- 応募書類の保管期間を管理表で持つ
- 処分予定日で並べ替える
- 採用した人の書類は別に移す
- 選考が途中で止まった人
- 保管期間を延ばして再応募や人材プールに使うなら、同意を取る
- 不採用の連絡で確認する
- 同意を得た人と、そうでない人を分けて持つ
- 再応募の照合に使う場合
- 同意の期限も決める
- 応募書類に要配慮個人情報が含まれていたとき
- 求めていない情報が書かれていた場合
- こちらから求める場合
- 見られる人の範囲を絞る
- 応募書類の保管期間を社内の規程に書く
- 採用に関わる全員に配る
- 年に1回、実態を確認する
- 応募書類の保管期間にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
- 応募書類の保管期間に出てくる用語
- 応募書類の保管期間と一緒に押さえておきたいこと
- 応募者から消去を求められたときの答え方を決めておく
- 採用管理システムや採用代行に預けた分も、同じ保管期間で消す
- 募集のときに示した労働条件の記録は、応募書類とは別に残す
- よくある質問
応募書類の保管期間は、採用した人と不採用の人で分かれる
応募書類の保管期間は、1つのルールで決めようとすると必ず無理が出ます。採用したかどうかで、根拠になる法令が変わります。
採用した人の書類
労働基準法109条の「雇入れに関する書類」として、保存の対象になり得る期間は5年(経過措置により当分の間3年)
起算日は退職または死亡の日(労働基準法施行規則56条)
雇用の記録として持つ
不採用の人の書類
保存を義務づけた法令は無い個人情報保護法は、利用する必要が無くなった個人データを遅滞なく消去するよう努めることを求めている(22条)
持ち続ける理由のほうを説明する
「履歴書は5年」と書かれている理由
労働基準法109条は、労働者名簿、賃金台帳、雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を5年間保存することを求めています(経過措置により当分の間3年)。採用した人の履歴書を「雇入れに関する書類」として扱う運用があるため、5年という数字が出てきます。保存期間の起算日は、雇入れに関する書類なら労働者の退職または死亡の日とされています(労働基準法施行規則56条1項3号)。不採用の人の書類の話ではありません。
応募書類の保管期間を「何年」と定めた法令はない
個人情報保護委員会の「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A(A5-2)は、個人情報保護法には個人情報の保存期間や廃棄すべき時期の規定がないとしたうえで、利用する必要がなくなった個人データは遅滞なく消去するよう努めなければならない(22条)と説明しています。「遅滞なく」の期間も、業務上の必要性や保管を続けた場合の影響を考えて必要以上に長くならないようにすることが求められ、データ管理のサイクルなど実務上の都合に配慮することは認められています(A5-3)。ポイントは、年数は法令からは出てこないので、会社が理由を付けて決めることです。
募集する会社には職業安定法の決まりもかかる
労働者の募集を行う者は、求職者等の個人情報を、業務の目的の達成に必要な範囲内で、目的を明らかにして集め、その目的の範囲内で保管・使用しなければならないとされています(職業安定法5条の5第1項)。厚生労働省の指針(平成11年労働省告示第141号)は、収集目的に照らして保管する必要がなくなった個人情報を破棄または削除するための措置を講じることを求めています。
不採用者の応募書類の保管期間は、必要な期間だけ
不採用者の応募書類の保管期間は、法令では決まっていません。それなら、すぐ捨ててよいかというと、そうでもありません。持っておく実務上の理由がある期間だけ持つ、という考え方になります。
| 持っておく理由 | 必要な期間の目安 |
|---|---|
| 問い合わせへの回答(選考の経緯を説明する) | 選考終了から数か月 |
| 再応募があったときの照合 | 再応募を受け付ける期間に合わせる |
| 次の募集で声をかける(本人の同意がある場合) | 同意を得た期間まで |
| 採用選考に関する社内の記録 | 社内の規程で決めた期間 |
「選考終了から6か月」のような短い期間を決めている会社もありますが、これは法令上の期間ではありません。大事なのは、上の表のどの理由で、その長さにしたのかを説明できることです。たとえば再応募を半年間受け付けない決まりなら、照合に使う期間も半年、というように理由と長さをつなげます。個人情報保護委員会のQ&A(A9-20)も、再応募への対応などのための「合理的な期間」が過ぎた後に応募者から利用停止等を求められたら、応じる義務があると考えられるとしています。
期間を決めたら、社内の規程に書く
担当の判断で捨てたり残したりしていると、同じ立場の応募者で扱いが違うことになります。期間を決めて、規程かマニュアルに書いてください。決めていない状態がいちばん危ないです。
利用目的を先に決める
個人情報保護法は、個人情報を扱うときは利用目的をできる限り特定し(17条)、履歴書のように本人から直接書面で受け取る場合は、あらかじめ本人に利用目的を明示することを求めています(21条2項)。採用選考に使うことは取得の状況から明らかとされる場合もありますが(同条4項4号)、次の募集で連絡する、グループ会社と共同で使うといった使い方は、それだけでは伝わりません。職業安定法の指針も、求職者が一般的かつ合理的に想定できる程度に具体的に目的を示すよう求めています。応募の受付ページや募集要項に、利用目的と保管期間の考え方を書いておいてください。
返却するかどうかを決める
応募書類の返却について、返却を義務づけた法令はありません。個人情報保護委員会のQ&A(A9-20)でも、個人情報保護法上、提出された履歴書を返却する義務はないとされています。返す会社も、返さずに責任を持って廃棄する会社も、どちらもあります。返却の進め方は履歴書の返却にまとめています。
| 方針 | やること | 負担 |
|---|---|---|
| 返却する | 不採用の連絡と一緒に郵送する。返送用の封筒と切手が要る | 費用と手間がかかる |
| 返却しない(廃棄する) | 責任を持って廃棄することを募集要項と不採用の連絡に明記する | 負担は小さい |
| 希望者に返却する | 不採用の連絡に返却を希望するかを書く | 件数によっては手間が増える |
募集要項に書いたとおりにする
いちばん大事なのはここです。募集要項に「返却します」と書いたなら、そのとおりにしてください。書いておきながら返さないと、問い合わせと不信につながります。返さない方針なら、その旨を書きます。
不採用の連絡に1行入れる
不採用の連絡の中で、書類をどう扱うかを1行書いてください。これがあるだけで、問い合わせが減ります。連絡の書き方は選考連絡の期限の決め方にまとめています。
保管期間が過ぎた応募書類の削除と廃棄
応募書類の保管期間が来たら、実際に消します。消したことを記録に残すところまでが手順です。
紙の書類
- 裁断または溶解で、内容が読み取れない形にします
- 一般のごみとして出さない。回収を業者に委託する場合は、処理の証明を受け取ります
- 廃棄した日と、対象の件数を記録に残します
データの書類
- メールの添付ファイル、共有フォルダ、パソコンのダウンロードフォルダをすべて確認します
- ごみ箱からも削除します
- バックアップに残っている場合の扱いを、情報システムの担当と決めておきます
いちばん残りやすいのは、メールの添付ファイルです。共有フォルダだけ消して安心していると、担当者のメールボックスに何年分も残っています。
コピーを作らない
選考のために書類を印刷して面接官に配ると、回収しなければコピーが増えます。面接の後に回収する、あるいは画面で見てもらう形にすると、消す作業が1か所で済みます。
廃棄の記録を残す
いつ、何件を、どうやって処分したかを1行残しておくと、後から確認できます。個別の氏名を残す必要はありません。「2026年8月分の不採用者12件を裁断処理」で足ります。
応募書類の保管期間を管理表で持つ
応募書類の保管期間は、書類がどこにあって、いつ処分するかを1枚で持つと守れます。期限が来たものが見える形にするのが目的です。
| 列 | 役割 |
|---|---|
| 受付番号 | 採用管理表と対応させる。氏名は最小限にする |
| 受領日 | 保管期間の起点 |
| 書類の種類 | 履歴書、職務経歴書、その他 |
| 形式 | 紙/データ。両方ある場合は両方書く |
| 保管場所 | キャビネットの段、フォルダのパス |
| 選考の結果 | 採用/不採用/辞退。扱いが分かれる |
| 処分の予定日 | 決めた期間を足した日 |
| 処分日と方法 | 実際に処分した記録 |
処分予定日で並べ替える
月に1回、処分予定日で並べ替えて、期日が来たものを処分します。この作業を月次に組み込まないと、書類はたまり続けます。
採用した人の書類は別に移す
採用が決まった時点で、その人の書類は採用選考の書類から、従業員の記録へ移します。置き場所も分けてください。混ざっていると、不採用者の書類を処分するときに一緒に消すおそれがあります。
選考が途中で止まった人
会社の都合で募集を止めた場合や、連絡が取れなくなった場合の扱いも決めておいてください。宙に浮いた書類がいちばん長く残ります。募集を止めたときの手順は選考中止の連絡のしかたにまとめています。
保管期間を延ばして再応募や人材プールに使うなら、同意を取る
次の募集で声をかけたい人がいる場合、本人の同意がないまま連絡先を持ち続けないでください。
不採用の連絡で確認する
いちばん自然なのは、不採用の連絡の中で確認する形です。「今後の募集の際にご連絡してもよろしいでしょうか」と1行入れて、返信をもらいます。返信があった人だけを残します。
同意を得た人と、そうでない人を分けて持つ
同じ表に混ぜていると、連絡してよい人が分からなくなります。同意の有無を1列持つか、置き場所を分けてください。人材プールの作り方は人材プールの作り方にまとめています。
再応募の照合に使う場合
再応募を受け付ける方針なら、前回の記録が要ります。ただし、書類そのものを持ち続ける必要はありません。受付番号、応募日、選考の結果、理由の区分だけを残せば照合できます。方針の決め方は再応募の受け付け方にまとめています。
同意の期限も決める
「今後の募集の際に連絡してよい」という同意も、無期限ではありません。1年、2年といった期限を伝えたうえで同意をもらうと、その後の扱いが決まります。
応募書類に要配慮個人情報が含まれていたとき
応募書類に、病歴や障害に関する記載が本人の判断で書かれていることがあります。これらは要配慮個人情報にあたるものを含み、取得には原則として本人の同意が要ります(個人情報保護法20条2項)。また職業安定法の指針は、本籍・出生地など社会的差別の原因となるおそれのある事項、思想・信条、労働組合への加入状況を、原則として集めてはならないとしています。
求めていない情報が書かれていた場合
個人情報保護委員会のQ&A(A4-8)は、郵便物の誤配のように会社が求めていない要配慮個人情報が送られてきた場合、直ちに返送したり廃棄したりして提供を「受ける」行為がないといえるときは、取得したとは解釈されないとしています。ただ、応募書類の中に本人の判断で書かれていた場合にそのまま当てはまるかは、個別の判断になります。選考の材料にせず、保管期間が来たら確実に消す扱いにしておくと安全です。
こちらから求める場合
業務上の合理的な必要性があって健康の状況を確認する場合は、その必要性を説明できる状態にしておいてください。厚生労働省の「公正な採用選考の基本」では、合理的・客観的な必要性が認められない健康診断の実施が、配慮すべき事項として挙げられています。詳しくは面接で聞いてはいけない質問にまとめています。
見られる人の範囲を絞る
応募書類を面接官全員に配ると、必要のない人まで内容を見ることになります。見る必要がある人だけに渡すという運用にしてください。
応募書類の保管期間を社内の規程に書く
応募書類の保管期間は、ここまでの内容と一緒に、社内で決めておく形に整理します。1枚に書いて、採用に関わる人に配ってください。
| 決めること | 書き方の例 |
|---|---|
| 利用目的 | 採用選考のために利用する。募集要項と応募フォームに記載する |
| 不採用者の保管期間 | 選考終了から◯か月。期間経過後は裁断処理する |
| 返却の方針 | 返却しない(責任を持って廃棄する)。希望があれば返却する |
| 採用者の書類 | 従業員の記録へ移す。保存期間は労務の規程に従う |
| 保管の場所 | 紙は施錠できるキャビネット。データは共有フォルダの指定の場所 |
| 見られる人 | 採用担当と、その選考に関わる面接官まで |
| 処分の確認 | 月1回、処分予定日が過ぎたものを確認して処分する |
| 同意を得た場合の扱い | 次回の連絡についての同意がある人は、別の場所で◯年まで保持する |
採用に関わる全員に配る
採用担当だけが知っていても、面接官が印刷した書類を机に置いたままにしていれば同じことです。面接をする人にも配ってください。
年に1回、実態を確認する
決めたとおりに運用されているかを、年に1回確認してください。キャビネットを開けて、処分予定日を過ぎた書類が残っていないかを見るだけで足ります。ここで残っていたら、月次の確認が回っていません。
何に使うかを応募者へどう伝えるかは採用と個人情報にまとめています。
応募書類の保管期間にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
応募書類の保管期間は、2026年10月時点でも、年数を定めた法令がありません。そのまわりで、応募者の個人情報の扱いにかかわる改正と、個人情報保護委員会の説明の更新が続いています。日付順に並べます。
| 時期 | 出来事 | 応募書類の保管期間への影響 |
|---|---|---|
| 2022年10月1日 | 改正職業安定法(雇用保険法等の一部を改正する法律、令和4年法律第12号)が施行された。求職者等の個人情報を集めるときは、どんな目的で集め、保管し、使うのかを、求職者が一般的かつ合理的に想定できる程度に具体的に示すことが、厚生労働省の指針に書き込まれた | 「何のために、いつまで持つか」を募集の段階で示しておくことが、保管期間を決める出発点になる |
| 2024年4月1日 | 個人情報保護法施行規則の改正(令和5年個人情報保護委員会規則第5号)が施行された。不正の目的による行為で漏えい等が起きたときの報告の対象に、事業者が「取得し、又は取得しようとしている個人情報」で個人データとして扱う予定のものが加わった(規則7条3号) | Webの応募フォームに入力された情報も、報告の対象に入り得る。フォームとその保存先も、保管期間と消去の対象として管理する |
| 2025年7月1日 | 個人情報保護委員会が「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&Aを追加・更新した。確認日時点の版でも、保存期間や廃棄の時期の規定はないこと(A5-2)、不採用者の履歴書を返す義務はなく、合理的な期間が過ぎた後の利用停止等の請求には応じる義務があると考えられること(A9-20)が示されている | 保管期間を決める根拠として、このQ&Aの考え方をそのまま社内の規程に写せる |
| 2026年7月17日 | 個人情報保護法等の一部を改正する法律(令和8年法律第56号)が公布された(7月10日成立)。委託を受けた事業者の義務の見直し、漏えい等が起きたときの本人への通知の緩和、詐欺行為などで個人情報を不正に取得する行為への罰則、大規模で悪質な違反への課徴金などが入った。施行は原則として公布の日から2年を超えない範囲 | 採用管理システムや採用代行に応募書類を預けている会社は、施行までに委託先との取り決めを見直す |
応募書類の保管期間で、ポイントは法令が年数を決めない代わりに、「目的を示す」「要らなくなったら消す」「預け先も含めて管理する」を求める方向に進んでいることです。年数だけを決めて終わりにせず、目的と消し方をセットで規程に書いておくと、改正があっても直す場所が少なくて済みます。
出典:個人情報の保護に関する法律(e-Gov法令検索)、個人情報の保護に関する法律施行規則(e-Gov法令検索)、「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A(個人情報保護委員会)、令和8年 改正個人情報保護法について(個人情報保護委員会)、職業安定法(e-Gov法令検索)、職業安定法に基づく指針(平成11年労働省告示第141号、厚生労働省)、改正職業安定法の施行について(2022年5月18日 職業安定分科会資料、厚生労働省)
確認日は2026年10月6日です。個人情報保護法の扱いは個人情報保護委員会の「個人情報保護法相談ダイヤル」に、職業安定法の扱いは都道府県労働局の職業安定部に、労働基準法109条の扱いは所轄の労働基準監督署にご確認ください。
応募書類の保管期間に出てくる用語
応募書類の保管期間の話では、「保管」「保存」「消去」「削除」のように、似た言葉が法令ごとに違う意味で出てきます。条文と個人情報保護委員会のQ&Aの言葉で並べます。
| 用語 | 意味 | 出典 |
|---|---|---|
| 応募書類 | 履歴書・職務経歴書など、応募のときに出してもらう書類 | 法令上の定義はない |
| 保管期間 | 会社が応募書類を手元に持っておく期間 | 法令上の定義はない(労働基準法109条は「保存」の語を使う) |
| 個人情報 | 生存する個人に関する情報で、氏名や生年月日などで特定の個人を識別できるもの | 個人情報保護法2条1項 |
| 個人データ | 個人情報データベース等(特定の個人情報を検索できるように体系的に構成したもの)を構成する個人情報。採用管理表に入れた応募者の行はこれに当たる | 同法16条1項・3項 |
| 保有個人データ | 会社が開示・訂正・利用停止・消去などをする権限を持つ個人データ。本人からの利用停止等の請求の対象になる | 同法16条4項、35条 |
| 要配慮個人情報 | 人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴などが含まれる個人情報。取得には原則として本人の同意が要る | 同法2条3項、20条2項 |
| 消去 | 保有個人データとして使えなくすること。データを削除するほか、特定の個人を識別できないようにすることも含む | 個人情報保護委員会のQ&A(A9-18) |
| 求職者等の個人情報 | 求職者や、募集に応じて労働者になろうとする者などの個人情報。募集する会社も、目的の範囲内で集め、保管し、使う義務を負う | 職業安定法5条の5 |
| 雇入れに関する書類 | 労働基準法で5年(経過措置により当分の間3年)の保存が求められる書類の1つ。起算日は労働者の退職または死亡の日 | 労働基準法109条・附則143条、同法施行規則56条1項3号 |
応募書類の保管期間で混ざりやすいのは、労働基準法の「保存」と個人情報保護法の「消去」です。前者は「少なくともこの期間は持つ」、後者は「要らなくなったら消すよう努める」で、向きが逆です。採用した人の書類は前者、不採用者の書類は後者で考えると、整理がつきます。
応募書類の保管期間と一緒に押さえておきたいこと
応募書類の保管期間の解説は、「何年持つか」と「返すかどうか」で終わることが多くあります。実務で抜けやすいことを3つ挙げます。
応募者から消去を求められたときの答え方を決めておく
個人情報保護法では、本人は、会社がその保有個人データを利用する必要がなくなった場合などに、利用停止や消去を請求できます(35条5項)。請求に理由があれば、会社は必要な限度で遅滞なく応じなければならず(同条6項)、応じたかどうかを本人に通知します(同条7項)。個人情報保護委員会のQ&A(A9-20)は、不採用者の履歴書の情報が保有個人データに当たる場合、再応募への対応などのための合理的な期間が過ぎた後に請求を受けたときは、応じる義務があると考えられるとしています。保管期間を規程に書いておけば、「いつまで持つ理由があるか」をそのまま答えられます。
採用管理システムや採用代行に預けた分も、同じ保管期間で消す
応募書類のデータを採用管理システムの事業者や採用代行に預けているときは、会社は委託先を必要かつ適切に監督しなければなりません(個人情報保護法25条)。社内のキャビネットとフォルダだけ消しても、委託先のシステムに残っていれば、保管期間を守ったことになりません。契約書や設定画面で、削除の期限と方法、削除したことの確かめ方を決めておいてください。2026年7月に公布された改正法では、委託を受けた事業者の義務も見直されています。
募集のときに示した労働条件の記録は、応募書類とは別に残す
応募書類とは別に、募集する会社は、募集のときに示した業務の内容や労働条件の記録を、募集が終わる日(その後に労働契約を結ぶ相手については、契約を結ぶ日)まで保存しなければならないとされています(職業安定法施行規則4条の2第7項)。応募書類を処分するときに、求人票や募集要項の控えまで一緒に捨てないようにしてください。採用した人の雇入れに関する書類は、その後も労働基準法109条の保存期間に従います。
出典:個人情報の保護に関する法律(e-Gov法令検索)、「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A(個人情報保護委員会)、職業安定法施行規則(e-Gov法令検索)、労働基準法(e-Gov法令検索)、労働基準法施行規則(e-Gov法令検索)
よくある質問
- Q. 応募書類の保管期間は何年ですか?
- 一律の年数は法令で決まっていません。個人情報保護委員会のQ&Aも、個人情報保護法には保存期間や廃棄すべき時期の規定がないとしています。不採用になった人の応募書類は、再応募への対応など持っておく理由がある期間だけ持ち、要らなくなったら遅滞なく消去するよう努めます(個人情報保護法22条)。採用した人の書類は労働基準法109条の「雇入れに関する書類」として保存の対象になり得ます(5年、経過措置により当分の間3年。起算日は退職または死亡の日)。個別の判断は社会保険労務士または都道府県労働局にご確認ください。
- Q. 不採用者の応募書類は、すぐ捨ててよいですか?
- 保存の義務はありませんが、問い合わせへの回答や再応募の照合といった実務上の理由がある期間は持つのが一般的です。たとえば再応募を受け付けない期間が6か月なら保管期間も6か月、というように、理由と長さをつなげて決めると説明がつきます。決めた期間は社内の規程に書いてください。決めていない状態がいちばん危ない形です。
- Q. 応募書類は返却しなければなりませんか?
- 返却を義務づけた法令はありません。ただし、募集要項に返却すると書いたなら、そのとおりにしてください。返さない方針なら、責任を持って廃棄することを募集要項と不採用の連絡に明記してください。
- Q. データで受け取った応募書類は、どこを消せばよいですか?
- メールの添付ファイル、共有フォルダ、パソコンのダウンロードフォルダをすべて確認し、ごみ箱からも削除してください。いちばん残りやすいのはメールの添付ファイルです。共有フォルダだけ消しても、担当者のメールボックスに残っています。
- Q. 次の募集で連絡したい人の書類は、持ち続けてよいですか?
- 本人の同意が要ります。不採用の連絡の中で「今後の募集の際にご連絡してもよろしいでしょうか」と確認し、返信があった人だけを残してください。同意にも1年、2年といった期限を伝えたうえでもらうと、その後の扱いが決まります。
- Q. 応募者から「応募書類のデータを消してほしい」と言われたら、応じなければなりませんか?
- 保有個人データに当たる場合、利用する必要がなくなったことなどを理由に利用停止や消去を求められ、その請求に理由があるときは、必要な限度で遅滞なく応じる義務があります(個人情報保護法35条5項・6項)。個人情報保護委員会のQ&A(A9-20)は、再応募への対応などのための合理的な期間が過ぎた後の請求には応じる義務があると考えられるとしています。一方、提出された履歴書そのものを返す義務は、個人情報保護法にはありません。
- Q. 採用管理システムに入れた応募書類も、保管期間の対象ですか?
- 対象です。システムの事業者に取り扱いを委託している場合、会社は委託先を監督する義務を負います(個人情報保護法25条)。社内のファイルだけ消してもシステムに残っていれば意味がないので、削除の期限と方法を契約や設定で決めておいてください。
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