入社前課題の出し方|任意にする形と、分量の目安
承諾から入社まで期間が空くとき、その間に何か準備してもらいたくなります。資格の勉強、資料の読み込み、eラーニング。気持ちは分かりますが、線を越えると問題になります。
入社日より前は、まだ働き始めていない期間です。この記事では、入社前課題の出し方を、出してよい範囲から分量、任意にする形、提出状況の追い方までの順に整理します。
この記事の内容(9項目)
- 入社前は、労働契約の期間の外にある
- 「任意」と書いても、任意にならないことがある
- 迷ったら、入社後に回す
- 目的を「不安を減らすこと」に置く
- 入社前課題として出してよい範囲
- 実際の業務に関わる作業は出さない
- 提出書類の準備は別
- 資格の取得は、入社後の支援に回す
- 分量と期限の目安
- 「合計◯時間程度です」と書く
- 期限は入社日の1週間前まで
- まとめて出さない
- 任意にする形
- 提出を求めない形にする
- やらなかった人を初日に責めない
- 費用がかかるものは会社が出す
- 提出が要るものの追い方
- 任意と必須を同じ表で持つなら、列で分ける
- 期限で並べ替える
- 提出が無いときは、理由を聞く
- 提出が止まるのは、辞退の兆しでもある
- 出す内容を決める
- 社内用語の1枚がいちばん喜ばれる
- 体制図に写真を入れる
- 初日の予定表は必ず渡す
- 新卒と中途で変える
- 中途採用には、ほとんど出さなくてよい
- 新卒には、間隔を空けて出す
- 同期との顔合わせは、課題ではない
- 入社後につなげる
- 初日に、渡した資料に触れる
- 読んでいない前提で説明する
- 試用期間の確認項目とつなげる
- 次の人のために、資料を残す
- よくある質問
入社前は、労働契約の期間の外にある
まず前提を確認します。入社日より前の時点では、まだ働き始めていません。ここを踏まえずに課題を出すと、実質的に働かせている状態になりかねません。
「任意」と書いても、任意にならないことがある
案内に「任意です」と書いても、やらなかった人が入社後に不利になる形になっていれば、任意ではありません。提出状況を配属先に伝えて評価に使う、といった運用は避けてください。
迷ったら、入社後に回す
入社後にやれば、労働時間として扱えます。入社前にやる必要が本当にあるかを、1度考えてください。多くの場合、入社後で足ります。
目的を「不安を減らすこと」に置く
入社前課題の目的を「即戦力にすること」に置くと、分量が増えていきます。「初日に困らないようにすること」に置くと、必要な範囲が自然に決まります。
入社前課題として出してよい範囲
負担の大きさで、扱いを分けてください。負担が大きいものほど、入社後に回すのが無難です。
| 内容 | 負担 | 扱い |
|---|---|---|
| 会社案内、社内報を読む | 小さい | 任意で渡す。返却も報告も求めない |
| 業界の基本的な資料を読む | 小さい | 任意で渡す |
| 提出書類を準備する | 小さい | 手続きなので依頼してよい |
| eラーニングの受講 | 中くらい | 分量と期限を明示。任意にする |
| レポートの作成 | 大きい | 避ける。入社後に回す |
| 資格や免許の取得 | 大きい | 入社後に支援する形が無難 |
| 実際の業務に関わる作業 | 大きい | 出さない |
実際の業務に関わる作業は出さない
提案書を作らせる、データを集めさせる、といった実際の業務そのものは、入社前に出さないでください。これは働かせていることになります。
提出書類の準備は別
雇用の手続きに必要な書類を用意してもらうのは、課題ではなく手続きです。依頼して構いません。回収のしかたは入社書類の回収にまとめています。
資格の取得は、入社後の支援に回す
入社前に資格を取るよう求めると、費用も時間も本人の負担になります。入社後に受験料や講習費を支援する形にしているところが多くあります。
分量と期限の目安
分量が決まっていないと、本人はどこまでやればよいか分かりません。時間で示すのがいちばん分かりやすい形です。
| 入社までの期間 | 分量の目安 | 置き方 |
|---|---|---|
| 1か月 | 合計2時間まで | 資料を読む程度 |
| 3か月 | 合計5時間まで | 読む資料と、短い動画 |
| 半年以上(新卒) | 月2時間程度 | 月1回、小さい単位で出す |
「合計◯時間程度です」と書く
これを書くだけで、本人が予定を立てられます。書いていないと、どこまでやればよいか分からず、負担に感じます。
期限は入社日の1週間前まで
入社の直前に期限を置くと、退職の手続きや引っ越しと重なります。入社日の1週間前を期限にして、それ以降は求めない形にしてください。
まとめて出さない
入社まで半年ある場合、最初に全部渡すと量に圧倒されます。月1回、小さい単位で出すほうが続きます。内定者への連絡の間隔と合わせると、自然に組めます。間隔の決め方は内定者フォローのやり方にまとめています。
任意にする形
「任意です」と書くだけでは足りません。やらなくても不利にならない運用にして、初めて任意になります。
- 案内に、任意であることと、やらなくても入社後の扱いは変わらないことを書く
- 提出状況を、配属先や評価する人に共有しない
- やった人に有利な情報を与える、という形にとどめる
- 催促を1回までにする。何度も送ると、事実上の強制になります
提出を求めない形にする
読んでもらうだけなら、提出も報告も求めないほうが、任意であることがはっきりします。提出を求めると、それだけで義務のように受け取られます。
やらなかった人を初日に責めない
「資料は読んできましたか」と初日に聞くと、任意ではなかったことになります。読んでいない前提で初日を組んでください。
費用がかかるものは会社が出す
eラーニングの受講料や、資料の送付にかかる費用は会社が負担してください。本人に負担させると、任意とは言えなくなります。
提出が要るものの追い方
手続きに必要な書類など、提出が要るものは別の扱いです。こちらは期限を切って追います。
| 列 | 役割 |
|---|---|
| 内定者名と入社日 | 期限の起点 |
| 課題または書類の名称 | 何を出してもらうか |
| 任意か必須か | この列で扱いを分ける |
| 依頼日 | いつ伝えたか |
| 期限 | 入社日からの逆算 |
| 提出日 | 空欄なら未提出 |
| 催促の回数 | 1回までに収める |
任意と必須を同じ表で持つなら、列で分ける
混ぜて管理すると、任意のものまで催促することになります。列で分けて、催促の対象を必須だけにしてください。
期限で並べ替える
提出日が空欄で期限が近いものが上に集まります。週に1回この並べ替えをすれば、抜けません。
提出が無いときは、理由を聞く
期限を過ぎたときに、催促の前に「何かご不明な点がありましたか」と聞くほうが、状況が分かります。書類の書き方が分からず止まっていることがあります。
提出が止まるのは、辞退の兆しでもある
必須の書類が出てこない場合、入社の意思が揺らいでいることがあります。兆しの拾い方は内定者フォローのやり方にまとめています。
出す内容を決める
何を渡すかは、初日に困ることから逆算すると決まります。
| 初日に困ること | 渡すもの |
|---|---|
| 誰が誰だか分からない | 配属先の体制図。写真つきだと分かりやすい |
| 社内の用語が分からない | よく使う言葉を10個ほど並べた1枚 |
| 何をする会社か説明できない | 会社案内、主要な取引先や製品の資料 |
| 建物の中で迷う | フロアの案内図 |
| 初日の流れが分からない | 当日の予定表 |
社内用語の1枚がいちばん喜ばれる
どの会社にも、外から来た人には通じない言葉があります。10個ほど並べた1枚を渡すだけで、初日の会話が分かるようになります。作るのに30分もかかりません。
体制図に写真を入れる
名前だけの体制図では覚えられません。顔写真が入っていると、初日に誰と話しているかが分かります。社員の同意を得たうえで作ってください。
初日の予定表は必ず渡す
これは課題ではなく案内ですが、いちばん不安を減らします。受け入れの準備と合わせて作ってください。作り方は入社受け入れの準備にまとめています。
新卒と中途で変える
入社までの期間も、必要な準備も違います。同じ課題を出さないでください。
新卒
入社まで半年以上社会人としての基本から
同期との関係づくりも意味がある
月1回、小さい単位で
中途
入社まで1か月から2か月基本の説明は不要
在職中で時間が無い
読む資料を渡す程度
中途採用には、ほとんど出さなくてよい
在職中の人は、現職の引き継ぎで手一杯です。入社前に課題を出すと、負担にしかなりません。会社案内と初日の案内で足ります。
新卒には、間隔を空けて出す
入社まで半年ある場合、月1回の連絡と一緒に、小さい単位で渡すと続きます。まとめて出すと量に圧倒されます。
同期との顔合わせは、課題ではない
内定者どうしの顔合わせは、効果はありますが参加は任意にしてください。日程が合わない人が不利にならない形にします。やり方は内定者フォローのやり方にまとめています。
入社後につなげる
入社前に渡したものは、入社後に使われて初めて意味を持ちます。
初日に、渡した資料に触れる
「お渡しした体制図の、この人が教育の担当です」と初日に触れると、渡した資料が生きます。触れないと、読んだ人も読まなかった人も同じになります。
読んでいない前提で説明する
任意で渡したものなので、読んでいない前提で初日を組んでください。読んでいた人には「すでにご存じかもしれませんが」と添えれば足ります。
試用期間の確認項目とつなげる
入社前に渡した内容を、試用期間の確認項目にしないでください。任意で渡したものを、後から評価の基準にすることになります。確認項目の決め方は試用期間の使い方と本採用の判断にまとめています。
次の人のために、資料を残す
作った資料は、次に入社する人にもそのまま使えます。置き場所を決めて、内容が古くなったら直す形にしてください。
よくある質問
- Q. 入社前に課題を出してもよいですか?
- 入社日より前は、まだ働き始めていない期間です。業務に近いことを実質的に強制する形にしないでください。会社案内や社内用語をまとめた資料を任意で渡す程度にとどめ、レポートの作成や資格の取得といった負担の大きいものは入社後に回すのが無難です。判断が必要な場面は社会保険労務士にご確認ください。
- Q. 「任意」と書けば、どんな課題を出してもよいですか?
- いいえ。やらなかった人が入社後に不利になる形になっていれば、任意ではありません。提出状況を配属先や評価する人に共有しない、催促を1回までにする、費用は会社が負担する、といった運用があって初めて任意になります。
- Q. 入社前課題の分量は、どのくらいが目安ですか?
- 入社まで1か月なら合計2時間まで、3か月なら合計5時間までが目安です。「合計◯時間程度です」と書くだけで、本人が予定を立てられます。入社まで半年ある場合は、月1回、小さい単位で出すほうが続きます。
- Q. 中途採用の人にも、入社前課題は必要ですか?
- ほとんど不要です。在職中の人は現職の引き継ぎで手一杯で、入社前の課題は負担にしかなりません。会社案内と初日の案内で足ります。
- Q. 入社前に渡した資料を、試用期間の確認項目にしてよいですか?
- しないでください。任意で渡したものを、後から評価の基準にすることになります。初日は読んでいない前提で組み、読んでいた人には「すでにご存じかもしれませんが」と添えれば足ります。
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