入社書類の回収|依頼の出し方と締切の置き方
入社の手続きには期限があります。社会保険の届出も、給与の支払いも、書類がそろわないと進みません。それでも、入社書類は毎回そろわないのが実情です。
原因は、依頼のしかたにあることがほとんどです。この記事では、入社書類の回収を、依頼の出し方から締切の置き方、未提出の追い方、預かった書類の管理までの順に整理します。
この記事の内容(9項目)
- 入社書類の回収がそろわない原因は、依頼のしかたにある
- 何のために要るかを1行書く
- 入手先を書く
- まとめて1通で出す
- 依頼に入れる項目
- 該当しない場合を必ず書く
- 原本か写しかを書く
- 締切の置き方
- 前職から届くものは、入社後でよいと伝える
- 不備を直す時間を見込む
- 依頼は入社1か月前に出す
- 未提出の追い方
- 締切で並べ替える
- 催促の前に、困っていないかを聞く
- 入社日に受け取るものを分けておく
- 提出が止まるのは、辞退の兆しでもある
- 預かった書類の管理
- 原本と写しを分ける
- 保管期間は労務の規程に従う
- 見られる人の範囲を決める
- 特に扱いに注意が要るもの
- 依頼の文面を作っておく
- 定型文に入れる構成
- PDFにして添付する
- 雇用の形態ごとに用意する
- 年に1回見直す
- 入社日に手続きをまとめる
- その場で不備を確認する
- 原本はその日のうちに返す
- 受け取ったことを本人に伝える
- 入社前課題と混ぜない
- 連絡を分ける
- 管理表も分ける
- 催促のしかたも変える
- 本人から見て分かる形にする
- よくある質問
入社書類の回収がそろわない原因は、依頼のしかたにある
入社書類が集まらないとき、本人が怠けているわけではありません。何を、いつまでに、どこへ出せばよいかが分からないことがほとんどです。
そろわない依頼
「必要書類を提出してください」一覧だけを渡す
締切が書いていない
提出先が分からない
本人が判断できない
そろう依頼
書類ごとに何のためかを1行入手先を書く
締切を日付で書く
提出先と方法を書く
そのまま動ける
何のために要るかを1行書く
「年金手帳」とだけ書かれても、なぜ要るか分からないと後回しになります。「社会保険の加入手続きに使います」と1行あるだけで、優先度が伝わります。
入手先を書く
本人が持っていない書類は、どこかで取得する必要があります。どこで取れるか、費用がかかるかを書いておくと、取りに行く段取りが組めます。
まとめて1通で出す
思い出すたびに追加で依頼すると、本人は何度も対応することになります。依頼は1通にまとめてください。後から足すと、そのぶん全体が遅れます。
依頼に入れる項目
依頼の1通に、次の項目を書きます。表の形にすると、本人がそのままチェックリストとして使えます。
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 書類の名称 | 正式な名前で。通称だと通じないことがある |
| 何に使うか | 1行。優先度が伝わる |
| 入手先 | 市区町村、前職、本人が保管、こちらで用意 |
| 原本か写しか | 間違えると取り直しになる |
| 締切 | 日付で書く。「入社まで」では動かない |
| 提出先と方法 | 誰に、どうやって(持参、郵送、データ) |
| 該当しない場合 | 「該当しない方は不要です」と明記する |
該当しない場合を必ず書く
扶養に関する書類や、前職の書類は、全員に必要なわけではありません。「該当しない方は不要です」と書いていないと、本人が困って連絡してきます。
原本か写しかを書く
写しでよいものを原本で持ってきてもらうと、預かる責任が増えます。写しでよいものは、そう書いてください。
締切の置き方
締切を「入社日まで」にすると、入社の当日に持ってくる人が出ます。そこから手続きを始めると、期限に間に合わないことがあります。
| 書類の種類 | 締切の置き方 | 理由 |
|---|---|---|
| 手続きに使うもの | 入社日の1週間前 | 不備があったときに直す時間が要る |
| 本人が取得するもの | 入社日の2週間前 | 取得に時間がかかる |
| 前職から届くもの | 入社後でよい旨を伝える | 本人の努力では早められない |
| 入社日に記入するもの | 入社日当日 | その場で書いてもらう |
前職から届くものは、入社後でよいと伝える
前の会社から送られてくる書類は、本人がいくら急いでも早くなりません。「届き次第で結構です」と伝えておかないと、本人が焦ります。届かない場合の対応も、あらかじめ伝えておくと安心してもらえます。
不備を直す時間を見込む
記入漏れや押印のもれは、必ず出ます。入社日の1週間前を締切にすれば、直す時間が取れます。当日に受け取ると、その場で直すことになります。
依頼は入社1か月前に出す
締切から逆算すると、依頼は入社の1か月前です。承諾の直後に出すと早すぎて忘れられ、直前だと間に合いません。受け入れ準備の流れは入社受け入れの準備にまとめています。
未提出の追い方
締切を過ぎたものを、1人1行の表で追います。記憶で追うと必ず漏れます。
| 列 | 役割 |
|---|---|
| 入社者名と入社日 | 締切の起点 |
| 書類の名称 | 依頼した書類を行で並べる |
| 必須か該当時のみか | 催促の対象を分ける |
| 依頼日 | いつ伝えたか |
| 締切 | 日付 |
| 受領日 | 空欄なら未提出 |
| 原本の返却 | 預かったものを返したか |
| 保管場所 | どこにしまったか |
締切で並べ替える
受領日が空欄で締切が近いものが上に集まります。週に1回この並べ替えをすれば、当日に慌てません。
催促の前に、困っていないかを聞く
出てこない理由は、書き方が分からない、どこで取ればよいか分からないことが多くあります。「ご不明な点はありませんか」と聞くほうが、催促より早く解決します。
入社日に受け取るものを分けておく
入社日に記入してもらう書類は、当日の予定に組み込んでください。初日の午前に手続きの時間を取っておけば、その場で終わります。
提出が止まるのは、辞退の兆しでもある
必須の書類が何度依頼しても出てこない場合、入社の意思が揺らいでいることがあります。兆しの拾い方は内定者フォローのやり方にまとめています。
預かった書類の管理
入社書類には、本人の個人情報が集中しています。受け取った後の管理まで決めてください。
原本と写しを分ける
原本を預かった場合、返却するものと、こちらで保管するものを分けてください。返すべき原本を持ち続けると、本人が困ります。
| 扱い | やること |
|---|---|
| 返却する原本 | 写しを取ったら、いつ返すかを決めて返す。返却日を記録する |
| 保管する書類 | 施錠できる場所へ。保管期間を決める |
| データで受け取ったもの | 指定の場所へ移して、メールの添付は削除する |
保管期間は労務の規程に従う
採用した人の書類は、労働基準法109条の「雇入れに関する書類」として保存の対象になり得ます(5年、経過措置により当分の間3年)。応募書類とは扱いが違います。個別の判断は社会保険労務士にご確認ください。考え方の違いは応募書類の保管と返却にまとめています。
見られる人の範囲を決める
入社書類には、家族の情報や口座の情報が含まれます。採用担当と労務の担当以外が見られる場所に置かないでください。
特に扱いに注意が要るもの
マイナンバーを含む書類は、取得の目的、保管の方法、廃棄の方法について特別の取り扱いが定められています。この記事では詳細を扱いません。取り扱いの方法は、税務署または社会保険労務士にご確認ください。
依頼の文面を作っておく
入社のたびに文面を考えていると、抜けが出ますし、時間もかかります。1通の定型文を作ってください。
定型文に入れる構成
- 入社の日時と場所。まずここを書きます
- 書類の一覧の表。名称、用途、入手先、原本か写しか、締切
- 提出先と方法。持参、郵送、データのどれか
- 該当しない場合の扱い。「該当しない方は不要です」
- 質問の連絡先。担当者名と電話番号
PDFにして添付する
メール本文に表を書くと、スマートフォンでは崩れて読めません。PDFにして添付するか、印刷して郵送すると確実です。
雇用の形態ごとに用意する
正社員、パート、契約社員で必要な書類が違う場合、形態ごとに定型文を分けてください。1つの文面に全部載せると、該当しない行が多くなって読みにくくなります。
年に1回見直す
制度の変更で、必要な書類が変わることがあります。年度の変わり目に、労務の担当と一緒に見直してください。古い一覧のまま依頼すると、不要な書類を取らせることになります。
入社日に手続きをまとめる
書類の提出を、入社日の午前にまとめると、1回で終わります。後日にすると、また日程を調整することになります。
| 時間 | やること |
|---|---|
| 始業から30分 | 提出書類を受け取る。その場で不備を確認する |
| 次の30分 | 当日記入するものを書いてもらう |
| その後 | 原本の写しを取り、返却するものを返す |
その場で不備を確認する
受け取った時点で確認すれば、その場で直してもらえます。後から気づくと、また依頼することになります。
原本はその日のうちに返す
写しを取ったらすぐ返してください。預かったままにすると、本人が必要になったときに困ります。返した日を記録に残します。
受け取ったことを本人に伝える
「すべてお預かりしました。◯◯は後日で結構です」と伝えると、本人は何が残っているかが分かります。伝えないと、気にしたままになります。
入社前課題と混ぜない
入社書類の依頼と、入社前の課題を1通で送ると、どちらが必須か分からなくなります。
入社書類
手続きに必要締切がある
催促してよい
必須
入社前課題
準備のため任意
催促は1回まで
やらなくても不利にしない
連絡を分ける
混ぜて送ると、任意のものまで必須に見えます。逆に、必須の書類が任意のものに埋もれることもあります。別々の連絡にしてください。課題の出し方は入社前課題の出し方にまとめています。
管理表も分ける
1つの表で持つなら、必須か任意かの列を必ず設けてください。催促の対象を機械的に分けられます。
催促のしかたも変える
書類は締切を過ぎたら連絡してよいものです。課題は1回までにとどめてください。同じ調子で追うと、任意のものが実質的な強制になります。
本人から見て分かる形にする
依頼の件名に「入社手続きに必要な書類のご提出について」「入社前にお読みいただきたい資料(任意)」と書き分けると、本人が優先度を判断できます。
よくある質問
- Q. 入社書類の依頼は、いつ出せばよいですか?
- 入社の1か月前が目安です。締切を入社日の1週間前に置くと、記入漏れや押印のもれを直す時間が取れます。承諾の直後に出すと早すぎて忘れられ、直前だと間に合いません。
- Q. 入社時に必要な書類を教えてください。
- 雇用の形態、社会保険の加入の有無、扶養の状況などによって変わるため、この記事では一覧を示していません。自社の場合に何が必要かは、社会保険労務士、年金事務所、ハローワークにご確認ください。
- Q. 書類が締切までに出てこないときは、どうしますか?
- 催促の前に「ご不明な点はありませんか」と聞いてください。出てこない理由は、書き方が分からない、どこで取ればよいか分からないことが多く、聞くほうが早く解決します。前職から届く書類は本人が急いでも早くならないので、届き次第で結構ですと伝えておいてください。
- Q. 預かった原本は、いつ返せばよいですか?
- 写しを取ったらその日のうちに返してください。預かったままにすると、本人が必要になったときに困ります。返した日を記録に残しておくと、後から確認できます。
- Q. 入社書類と入社前課題を、1通で送ってよいですか?
- 分けてください。混ぜると、任意のものまで必須に見え、逆に必須の書類が任意のものに埋もれます。件名で「必要な書類のご提出について」「お読みいただきたい資料(任意)」と書き分けると、本人が優先度を判断できます。
この記事で使う無料テンプレート
あわせて読みたい記事
本記事は一般的な業務の進め方を整理したものです。社内規程、契約条件、法令上の要件がある場合は、それらを優先してご確認ください。記事の内容は2026-08-30時点のものです。