試用期間の本採用の判断|基準の決め方と記録の残し方
試用期間を3か月と決めているのに、その3か月で何を見て本採用を判断するかが決まっていない。多くの会社で起きていることです。結果として、何も確認しないまま期間が過ぎて自動的に本採用になるか、期間の終わりに突然見送りを伝えることになります。
試用期間は、本人にとっても会社にとっても合っているかどうかを確かめる期間です。一般には、本採用の判断基準を先に決め、期間の途中で面談を入れ、記録を残す形が採られています。この記事では、試用期間の本採用の判断を、基準の決め方、面談、記録、判断の日までの順に整理します。本採用を見送るときに確かめる法令(労働契約法16条、労働基準法20条・21条)と、三菱樹脂事件の考え方も扱います。
この記事の内容(12項目)
- 本採用の判断の前提:試用期間中も労働契約は成立している
- 「試用期間中なら自由に辞めさせられる」ではない
- だからこそ、途中で伝える
- 社会保険や給与は通常どおり
- 本採用の判断基準は、入社前に決めて本人に渡す
- 時期によって見えることが違う
- 面接で評価した項目とつなげる
- 本人に渡す
- 試用期間の面談の時期と、本採用の判断に向けて話すこと
- 2週間後は、聞くだけの面談
- 1か月後と2か月後は、事実を伝える
- 面談は10分から20分でよい
- 本採用の判断のために記録に残すもの
- 「会社側でやった対応」の欄が効く
- その場で書いて、本人にも見せる
- 教育の担当と、判断する人を分ける
- 試用期間の終わりに本採用を判断する
- 判断する日を、期間の終わりより前に置く
- 判断は3つのどれか
- 期間の延長は、あらかじめ定めがあるかを確認する
- 本採用を見送るときに確かめる法令
- 本採用の通知がないまま期間が過ぎたら
- 見送る場合は、必ず専門家に相談する
- 試用期間中に本人から辞めたいと言われたとき
- 引き止める前に、理由を聞く
- 聞き取りは、辞めると決まった後のほうが本音が出る
- 記録は残す
- 本採用の判断が形だけになる3つの原因
- その1:確認項目が決まっていない
- その2:面談の予定が入っていない
- その3:判断する人が決まっていない
- 試用期間の長さと、本採用の判断に使える時間
- 長くしても、見ていなければ同じ
- 募集の段階で明示する
- 試用期間の本採用の判断にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
- 試用期間の本採用の判断に出てくる用語
- 試用期間の本採用の判断と一緒に押さえておきたいこと
- 見送りの理由は「採用のときに分からなかった事実」で説明できるようにしておく
- 解雇理由証明書には、本人が求めた事項だけを書く
- 本採用の判断の記録は、すぐに捨てない
- よくある質問
本採用の判断の前提:試用期間中も労働契約は成立している
試用期間の本採用の判断では、まず前提として、試用期間中であっても労働契約は成立しています。試しに働いてもらっている、という状態ではありません。
試用期間中の契約は、解約権を留保した労働契約がすでに成立していると解されています(三菱樹脂事件、最高裁大法廷昭和48年12月12日判決)。中央労働委員会が紹介する調整事例の解説でも、試用期間中の解約権の行使は、通常の解雇より広い範囲で解雇の自由が認められるものの、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当と是認されるものでなければならないとされています。解雇一般についても、労働契約法16条が、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められない解雇は無効としています。
「試用期間中なら自由に辞めさせられる」ではない
この誤解があると、確認も面談もしないまま、期間の終わりに突然見送りを伝えることになります。本人にとっては理由が分からず、会社にとっても説明ができません。
だからこそ、途中で伝える
期間の途中で「ここが足りていない」と伝えていれば、本人が直す機会があります。それでも変わらなかったのなら、判断の理由が説明できる状態になります。試用期間の使い方でいちばん大事なのは、途中で伝えることです。
社会保険や給与は通常どおり
試用期間だからといって、社会保険の加入や給与の支払いが変わるわけではありません。試用期間中と本採用後で業務の内容や賃金などの条件が違う場合は、募集のときに、それぞれの条件を示す必要があります(職業安定法施行規則4条の2第6項)。最低賃金を下回る額にするには、都道府県労働局長の許可(最低賃金の減額の特例、最低賃金法7条2号)が要ります。明示の範囲は募集要項の書き方にまとめています。
本採用の判断基準は、入社前に決めて本人に渡す
本採用の判断基準(試用期間で見る項目)は、入社する前に決めて、本人にも伝えておきます。後から決めると、本人が知らない基準で判断されることになります。
| 区分 | 見ること | 判断できる時期 |
|---|---|---|
| 勤怠 | 出勤、遅刻、連絡の有無 | 1か月 |
| 安全とルール | 決められた手順、保護具、報告 | 1か月 |
| 基本の作業 | 教えたことができるようになっているか | 1か月から2か月 |
| 周りとの進め方 | 報告、相談、引き継ぎ | 2か月 |
| 単独でできる範囲 | どこまで1人で任せられるか | 3か月 |
上の表は一例です。区分と時期は、仕事の中身に合わせて置き換えてください。
時期によって見えることが違う
3か月の試用期間なら、1か月で見えるものと、3か月かからないと見えないものを分けておくと、面談の時期も決まります。1か月目に「単独でできるか」を見ても、まだ判断できません。
面接で評価した項目とつなげる
面接で高く評価した項目が、実際に強みになっているかを見ると、面接の見立てが当たっているかも分かります。数回続けると、評価基準そのものを直す材料になります。評価基準の作り方は面接の評価基準の作り方にまとめています。
本人に渡す
確認する項目は、入社初日に本人へ渡してください。何を見られているかが分かっていれば、本人も動けます。渡していない基準で判断すると、後から説明ができません。
試用期間の面談の時期と、本採用の判断に向けて話すこと
試用期間の面談は、期間の終わりではなく途中に置きます。終わりに1回だけだと、伝えても直す時間がありません。
2週間後は、聞くだけの面談
最初の面談では、評価はしません。困っていること、分かりにくいこと、聞きにくいことを聞くだけです。ここで出た小さな不便を1つ解消するだけで、その後が変わります。
1か月後と2か月後は、事実を伝える
できていることと、まだ足りていないことを、具体的な事実で伝えてください。「もう少し頑張って」では、本人は何をすればよいか分かりません。
伝わらない言い方
もう少し積極的に周りをよく見て
報告が足りない
何をすればよいか分からない
伝わる言い方
作業が終わったら、次を聞きに来てください15時までに進み具合を1回報告してください
止まったら5分以内に声をかけてください
次の行動が決まる
面談は10分から20分でよい
長い面談を月1回やるより、短い面談を確実にやるほうが続きます。時間を取ることより、決めた時期にやることのほうが大事です。
本採用の判断のために記録に残すもの
試用期間の記録は、本採用を判断するときの根拠になります。判断そのものより、判断に至る過程が残っていることが大事です。
| 残すもの | なぜ要るか |
|---|---|
| 確認項目と、その時点の状態 | いつ何ができるようになったかが分かる |
| 面談日と話した内容 | 伝えた事実が残る |
| 本人から出た話 | 困っていたことが記録に残る |
| 会社側でやった対応 | 教える機会を与えたことが分かる |
| 次までにやること | 本人と会社の両方の宿題 |
「会社側でやった対応」の欄が効く
足りない点を伝えただけで終わっていると、本人の問題として片付けたことになります。教える人を付けた、手順書を渡した、作業を分けた、といった会社側の対応も記録に残してください。やることをやったうえでの判断だと説明できます。中央労働委員会が紹介するあっせんの事例でも、試用期間中の上司の指導に不十分な点が見られたことなどから、本採用拒否の理由は合理性がないと判断される可能性があると、あっせん員が会社に説明しています。
その場で書いて、本人にも見せる
面談の記録を後から書くと、印象で書かれます。面談の場で書いて、本人に見せて確認してもらうと、認識の食い違いが減ります。署名まで求めるかどうかは、社内の運用で決めてください。
教育の担当と、判断する人を分ける
教える人が判断もすると、本人が相談しにくくなります。日々の相談は教育の担当、判断は上位の責任者と分けておくと、途中の相談が出てきます。受け入れ時の分担は入社受け入れの準備にまとめています。
試用期間の終わりに本採用を判断する
試用期間の本採用の判断は、期間の終わりに行います。判断する日を先に決めて、記録を見ながら決める形にしてください。
判断する日を、期間の終わりより前に置く
期間の最終日に判断すると、伝える時間がありません。終了の2週間前あたりに判断の場を置くと、伝えたうえで期間を終えられます。
判断は3つのどれか
| 判断 | どういう状態か | 次にやること |
|---|---|---|
| 本採用 | 確認項目がおおむね満たされている | 本人に伝える。以降の目標を渡す |
| 期間の延長 | もう少しで届きそう。教える機会が足りなかった | 延長の可否と手続きを確認する |
| 本採用の見送り | 伝えても改善が見られない | 判断の可否を専門家に確認する |
期間の延長は、あらかじめ定めがあるかを確認する
試用期間を延長できるかどうかは、就業規則などに定めがあるかどうかによります。定めが無い場合の扱いや、延長の上限については、社会保険労務士にご確認ください。この記事では可否を判断していません。
本採用を見送るときに確かめる法令
| 確かめること | 決まり | 根拠 |
|---|---|---|
| 理由が通るか | 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、権利を濫用したものとして無効とされる。試用期間中の解約権の行使は、これより広く認められる余地があるが、自由ではない | 労働契約法16条、三菱樹脂事件(最大判昭和48年12月12日) |
| 予告が要るか | 解雇には少なくとも30日前の予告か、30日分以上の平均賃金の支払いが要る。試の使用期間中の者は、14日以内なら予告の規定が適用されないが、14日を超えて引き続き使用されると適用される | 労働基準法20条・21条 |
| 理由を書面で求められたら | 解雇の予告をした日から退職の日までの間に、本人が解雇の理由について証明書を求めたら、遅滞なく交付する | 労働基準法22条2項 |
| 就業規則に何と書いてあるか | 常時10人以上の労働者を使う会社は、退職に関する事項(解雇の事由を含む)を就業規則に書いて届け出る | 労働基準法89条3号 |
ポイントは、3か月の試用期間の終わりに見送る場合は、すでに14日を過ぎているので、解雇予告の規定がかかることです。「試用期間中だから予告は要らない」と考えていると、手続きの段階で食い違いが起きます。
本採用の通知がないまま期間が過ぎたら
本採用の通知を出すことは、法令では義務づけられていません。試用期間は解約権を留保した労働契約と解されているので、会社が何もしないまま期間が終われば、留保していた解約権を使わないまま期間が過ぎた形になります。本人は「本採用になったのかどうか」が分からないまま働くことになるので、判断した結果は、本採用の場合も口頭で済ませず、日付を入れて書面かメールで伝えておくと、後で食い違いません。
見送る場合は、必ず専門家に相談する
本採用を見送る判断は、個別の事情によって扱いが変わります。記録を持ったうえで、社会保険労務士または弁護士にご相談ください。記録が無い状態では、相談しても判断材料がありません。
試用期間中に本人から辞めたいと言われたとき
試用期間中に、本人から辞めたいと言われることがあります。ここで理由を聞いておくと、次の採用に返せます。
引き止める前に、理由を聞く
理由が分からないまま引き止めても、同じことが繰り返されます。辞めたい理由が、こちらで直せるものかどうかを先に確認してください。
| 理由 | 直せるか | やること |
|---|---|---|
| 仕事の中身が想像と違った | 次の募集で直せる | 募集要項の書き方を見直す |
| 教えてもらえない | いま直せる | 教育の担当と時間を確保する |
| 人間関係 | 場合による | 配置の変更が可能か確認する |
| 条件が合わない | 次の募集で直せる | 明示の内容と実態を突き合わせる |
| 家庭の事情 | 直せない | 数だけ記録する |
聞き取りは、辞めると決まった後のほうが本音が出る
引き止めるために聞くと、当たり障りのない理由になります。辞めることが決まってから、次の募集の参考として聞くほうが、実際の理由が出てきます。聞き方は早期離職の原因の調べ方にまとめています。
記録は残す
試用期間中に辞めた人の数と理由は、採用の見立てが当たっているかを見る材料になります。人数が少なくても、3年分たまれば傾向が出ます。
本採用の判断が形だけになる3つの原因
試用期間の仕組みはあるのに本採用の判断が機能していないとき、原因はだいたい次の3つです。
その1:確認項目が決まっていない
何を見るかが無いと、面談しても話すことがありません。入社前に項目を決めて、初日に本人へ渡すところまでやってください。項目は5つ以内で足ります。
その2:面談の予定が入っていない
「そのうちやろう」では、期間が終わります。入社日が決まった時点で、面談の日を予定表に入れてしまうのがいちばん確実です。10分から20分で足ります。
その3:判断する人が決まっていない
教育の担当が判断するのか、部門長が判断するのかが曖昧だと、誰も決めません。結果として自動的に本採用になります。判断する人と、判断する日を先に決めてください。
試用期間の長さと、本採用の判断に使える時間
試用期間の長さは、その仕事で一通りのことができるようになるまでの期間を目安に置かれています。中央労働委員会の調整事例の解説では、試用期間は3か月がいちばん多く、1か月から6か月にわたっているとされています。長ければ確かめられる、というものではありません。
| 職種の性質 | 長さの例 | 理由 |
|---|---|---|
| 手順が決まっている作業 | 1か月から3か月 | 基本の作業は早く見える |
| 複数の工程や担当を回る | 3か月から6か月 | 一巡しないと判断できない |
| 季節で仕事が変わる | 繁忙期を含む長さ | 忙しい時期の様子が見えない |
長くしても、見ていなければ同じ
6か月にしても、面談も記録もしていなければ、1か月の場合と判断材料は変わりません。長さより、途中で何回確認したかのほうが効きます。
募集の段階で明示する
試用期間の有無と長さ、期間中の労働条件が本採用後と異なる場合はその内容を、募集の段階で明示する必要があります(職業安定法施行規則4条の2第3項2号の2・6項)。書き漏らすと、入社後に説明が食い違います。確認の手順は募集要項の書き方にまとめています。
試用期間の本採用の判断にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
試用期間の本採用の判断を支える考え方は、1973年の三菱樹脂事件の最高裁判決が出発点で、中央労働委員会の事例解説でも、裁判所はほぼ一貫してこの判断を踏襲しているとされています。ここ数年で動いているのは、入社の前後に示す労働条件のルールと、紛争の統計です。日付順に並べます。
| 時期 | 出来事 | 本採用の判断への影響 |
|---|---|---|
| 1973年12月12日 | 三菱樹脂事件の最高裁大法廷判決。試用期間中の契約は解約権を留保した労働契約で、その解約権の行使には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が要るとされた | 本採用の見送りは解雇として扱われ、理由の説明が求められる。この記事の「記録を残す」はここにつながる |
| 2024年4月1日 | 労働条件明示のルールが改正された。労働契約を結ぶときに、就業場所と従事すべき業務の「変更の範囲」を示すことになった(労働基準法施行規則5条1項1号の3)。募集のときに示す事項にも、業務の内容と就業の場所の変更の範囲が入っている(職業安定法施行規則4条の2第3項1号・3号) | 試用期間中と本採用後で業務や就業場所が違うなら、その違いを募集のときと契約のときの両方で示す(職業安定法施行規則4条の2第6項) |
| 2026年7月7日 | 厚生労働省が「令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表した。総合労働相談は119万8,010件で18年連続で100万件を超えた。紛争調整委員会のあっせんの申請では「解雇」が最も多く、892件(前年度比12.6%増)だった | 本採用の見送りも解雇として争われ得る。記録がないと、あっせんなどで説明を求められたときに答えられない |
試用期間の本採用の判断で、ポイントは判断の基準そのものは50年近く変わっておらず、変わってきたのは「入社前にどこまで示したか」を問われる範囲だということです。試用期間中の条件と本採用後の条件を、募集と契約の段階でそろえて示しておくと、判断の場面で食い違いが起きにくくなります。
出典:個別労働紛争の調整事例「試用期間終了後の本採用拒否」(中央労働委員会)、労働契約法(e-Gov法令検索)、労働基準法施行規則(e-Gov法令検索)、職業安定法施行規則(e-Gov法令検索)、令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます(厚生労働省)、「令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します(厚生労働省、2026年7月7日)
確認日は2026年10月6日です。労働条件の明示と解雇予告の扱いは所轄の労働基準監督署に、本採用の見送りをめぐる相談は都道府県労働局の総合労働相談コーナーにご確認ください。個別の事案で見送りが認められるかどうかは、社会保険労務士または弁護士にご相談ください。
試用期間の本採用の判断に出てくる用語
試用期間の本採用の判断の話では、法令の言葉と、社内や裁判例で使われる言葉が混ざって出てきます。法令上の定義がない言葉も多いので、出典と一緒に並べます。
| 用語 | 意味 | 出典 |
|---|---|---|
| 試用期間 | 入社後、本採用の前に適格性を見る期間。労働基準法などは「試の使用期間」「試みの使用期間」の語を使う | 法令上の定義はない(労働基準法21条4号、職業安定法施行規則4条の2第3項2号の2に語が出てくる) |
| 本採用 | 試用期間を終えて、通常の雇用として続けること | 法令上の定義はない |
| 解約権留保付労働契約 | 試用期間中の契約の性質。会社が一定の解約権を留保したうえで、労働契約はすでに成立していると解される | 三菱樹脂事件(最大判昭和48年12月12日) |
| 本採用拒否(本採用の見送り) | 留保した解約権を使って本採用しないこと。裁判例では解約(解雇)と捉えられている | 中央労働委員会の調整事例の解説 |
| 解雇予告・解雇予告手当 | 解雇には少なくとも30日前の予告が要り、予告しない場合は30日分以上の平均賃金を払う。予告の日数は、平均賃金を払った日数だけ短くできる | 労働基準法20条 |
| 試の使用期間中の者 | 解雇予告の規定が適用されない人の1つ。ただし14日を超えて引き続き使用されると適用される | 労働基準法21条 |
| 解雇理由証明書 | 解雇の予告をされた人が、退職の日までに解雇の理由について請求したときに、会社が遅滞なく交付する証明書 | 労働基準法22条2項 |
| 最低賃金の減額の特例 | 試の使用期間中の者などについて、都道府県労働局長の許可を受けた場合に、最低賃金から一定の率を減額できる仕組み | 最低賃金法7条2号 |
| 試用期間の延長 | 決めた試用期間を延ばすこと。就業規則などの定めの有無が問題になる | 法令上の定義はない |
試用期間の本採用の判断で混ざりやすいのは、「試用期間だから解雇予告は要らない」という思い込みです。予告が要らないのは試の使用期間中で14日以内の場合だけで、3か月の試用期間の終わりに見送るときには予告の規定がかかります。
試用期間の本採用の判断と一緒に押さえておきたいこと
試用期間の本採用の判断の解説は、本採用拒否が認められるかどうかの法律論で終わることが多くあります。現場の手続きで抜けやすいことを3つ挙げます。
見送りの理由は「採用のときに分からなかった事実」で説明できるようにしておく
中央労働委員会の事例解説では、採用当初知ることができなかったような事実が試用期間中に分かり、その人を引き続き雇っておくのが適当でないと判断することに客観的な合理性がある場合に、本採用拒否は相当とされるとしています。面接で分かっていたことを、試用期間の終わりに理由として持ち出すと説明がつきにくくなります。判断基準の表に「面接で確かめたこと」と「試用期間で確かめること」を分けて書いておくと、何を理由にできるかがはっきりします。
解雇理由証明書には、本人が求めた事項だけを書く
本採用を見送る予告をしたあと、本人が解雇の理由について証明書を求めたら、会社は遅滞なく交付しなければなりません(労働基準法22条2項)。証明書には、本人が請求していない事項を書いてはならないとされています(同条3項)。面談の記録に残した事実が、そのまま理由を書くときの材料になります。
本採用の判断の記録は、すぐに捨てない
労働基準法109条は、雇入れや解雇、その他労働関係に関する重要な書類を5年間(経過措置により当分の間3年)保存するよう求めています(附則143条)。起算日は、雇入れや退職に関する書類なら退職または死亡の日とされています(労働基準法施行規則56条1項3号)。試用期間の確認表や面談の記録がこれに当たるかは書類ごとの判断になりますが、少なくとも本採用の判断にかかわった記録は、本人の在籍中と退職後しばらくは持っておく前提で置き場所を決めておくと安全です。
出典:個別労働紛争の調整事例「試用期間終了後の本採用拒否」(中央労働委員会)、労働基準法(e-Gov法令検索)、労働基準法施行規則(e-Gov法令検索)
よくある質問
- Q. 試用期間中なら、自由に辞めてもらうことはできますか?
- できません。試用期間中であっても、解約権を留保した労働契約が成立していると解されています(三菱樹脂事件、最大判昭和48年12月12日)。本採用を見送る場合の扱いは、通常の解雇より広く認められる余地があるとされていますが、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が要ります。個別の判断は社会保険労務士または弁護士にご確認ください。
- Q. 試用期間で本採用を見送るとき、解雇予告は要りますか?
- 試の使用期間中の者でも、14日を超えて引き続き使用されている場合は、解雇予告の規定が適用されます(労働基準法21条)。3か月の試用期間の終わりに見送るなら、少なくとも30日前の予告か、30日分以上の平均賃金の支払いが要ります(同法20条)。本人が解雇の理由について証明書を求めたら、遅滞なく交付します(同法22条2項)。
- Q. 本採用の判断基準には、何を入れればよいですか?
- 勤怠、安全とルール、基本の作業、周りとの進め方、単独でできる範囲のように、試用期間の中で確かめられることに絞ります。面接で分かっていたことではなく、採用のときに分からなかったことを確かめる項目にしておくと、判断の理由が説明しやすくなります。項目は入社前に決めて、初日に本人へ渡してください。
- Q. 試用期間はどのくらいの長さが適切ですか?
- その仕事で一通りのことができるようになるまでの期間が目安です。中央労働委員会の調整事例の解説では、3か月がいちばん多く、1か月から6か月にわたっているとされています。この記事では、手順が決まっている作業なら1か月から3か月、複数の工程を回る仕事なら3か月から6か月を例にしています。長さより、途中で何回確認したかのほうが判断材料になります。
- Q. 試用期間を延長してもよいですか?
- 延長できるかどうかは、就業規則などに定めがあるかどうかによります。定めが無い場合の扱いや延長の上限については、社会保険労務士にご確認ください。この記事では可否を判断していません。
- Q. 試用期間の面談は何回やればよいですか?
- 3か月なら、2週間後、1か月後、2か月後の3回が目安です。2週間後は評価をせず、困っていることを聞くだけにしてください。長い面談を月1回やるより、10分から20分の面談を確実にやるほうが続きます。
- Q. 本採用を見送るときに、何を用意しておくべきですか?
- 確認項目とその時点の状態、面談で伝えた事実、本人から出た話、会社側でやった対応の記録です。特に会社側の対応の記録が無いと、本人の問題として片付けたことになります。記録を持ったうえで、社会保険労務士または弁護士にご相談ください。
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