内定取消通知書|出す前に確かめる4つと、書面の残し方
内定を出したあとに、取り消さざるをえない場面があります。本人の事情による場合と、会社の事情による場合があり、どちらも書面で伝えることになります。
ここで押さえておきたいのは、内定が「労働契約が成立した状態」として扱われることです。そのため取消は、採用の見送りではなく、契約の解約として扱われます。手順を決めずにその場で進めると、あとから争いになります。
この記事では、内定取消通知書を、出す前に確かめること・書面に入れる項目・伝える順番・記録の残し方までまとめます。判断そのものは専門家に確かめる前提で、社内の段取りを整理します。
この記事の内容(11項目)
内定取消通知書を出す前に確かめる4つ
書面を作る前に、社内で確かめておくことがあります。
| 確かめること | なぜ |
|---|---|
| 内定通知をいつ、どの形で出したか | 口頭か書面かで、残っている記録が違う |
| 承諾書を受け取っているか | 受け取っていれば契約が成立したと扱われやすい |
| 取消の理由が何か | 本人の事情か、会社の事情かで扱いが変わる |
| 専門家に確かめたか | 社労士・弁護士。判断は社内だけで決めない |
ポイントはここです。4つ目を飛ばさないことです。内定取消の有効性は個別の事情で判断されるため、社内の判断だけで進めるのは危険です。
とくに会社の事情による場合は、慎重な検討が必要とされています。整理解雇に近い扱いになるという考え方があるためです。
内定を出したときの記録は内定承諾率を上げるで触れている管理表に残っているはずです。まずそこを開きます。
内定取消通知書に入れる項目
書面そのものは長くなりません。入れるのは6つです。
- 宛名。本人の氏名
- 日付。通知を出す日
- 会社名・代表者名・連絡先
- 内定を出した日と、その内容。いつの内定を取り消すのかを特定する
- 取消の理由。事実で書く
- 問い合わせ先。担当者と連絡方法
4つ目が抜けやすいところです。「先般の採用内定」ではなく、「2026年10月1日付でお知らせした採用内定」と特定します。
5つ目の理由は、評価の言葉ではなく事実で書きます。何が起きたのか、どの条件を満たさなかったのか。
そのうえで、文面は感情を交えません。相手にとっては予定が崩れる知らせなので、事実と手続きだけを簡潔に書きます。
内定取消の理由をどう書くか
理由の書き方でいちばん迷うところです。
| 場面 | 書き方の方向 |
|---|---|
| 卒業できなかった | 内定通知に条件として書いてあるかを確かめる |
| 提出書類に事実と違う記載があった | どの記載が、どう違ったかを特定する |
| 健康上の理由で就労できない | 慎重に。専門家に確かめてから |
| 会社の業績・事業の変更 | 会社都合。より慎重な検討が要る |
| 本人から辞退の申し出 | 取消ではなく辞退。書面の種類が違う |
最後の行が大事です。本人からの辞退なら、会社が取り消すのではありません。辞退の受理として扱い、書面も別のものになります。
1つ目については、内定通知の時点で条件を書いてあるかどうかで扱いが変わります。書いていなければ、条件として主張しにくくなります。
そのため、内定通知を出すときの文面も見直す価値があります。どういう場合に取り消すことがあるかを、あらかじめ書いておく形です。
内定取消は書面の前に口頭で伝える
順番があります。書面がいきなり届くのは、相手にとっていちばん厳しい形です。
| 順 | やること |
|---|---|
| 1 | 社内で決定し、専門家に確かめる |
| 2 | 本人に電話で伝える。理由と、書面を送ることを説明する |
| 3 | 書面を送る。記録の残る方法で |
| 4 | 本人からの問い合わせに答える窓口を決める |
2つ目で、いつ書面が届くかも伝えます。伝えずに切ると、相手は何が起きるか分からないまま待つことになります。
電話で伝えた内容は、そのまま記録に残します。日時、話した人、伝えた内容、相手の反応。あとから確かめられる形にします。
連絡の記録は内定者フォローで使っている様式に、そのまま追記できます。
内定取消通知書の送り方
届いたことが確かめられる方法を選びます。
- 特定記録郵便・書留。届いた記録が残る
- 内容証明郵便。何を送ったかまで記録が残る。争いが見込まれる場合
- メール。早いが、届いたかの確認が要る
- 手渡し。受領のサインをもらう
ふつうは1つ目で足ります。相手が受け取りを拒んでいる、連絡が取れないといった事情があれば、2つ目を検討します。
メールで送る場合も、あとから書面を郵送する形にしておくと確実です。メールは相手の受信環境で届かないことがあります。
送った記録は、発送の日付と方法と追跡番号まで残します。「送った」だけでは、届いたかどうかが分かりません。
内定取消のあとに起きること
通知して終わりではありません。
| 起きること | 備え |
|---|---|
| 本人から理由の説明を求められる | 誰が答えるかを決めておく |
| 金銭の話になる | 専門家に確かめてから答える |
| 学校や紹介会社から問い合わせが来る | 本人の同意なく詳細を話さない |
| 行政機関から照会が来る | 記録をそろえて事実を回答する |
3つ目に注意が要ります。学校や紹介会社は関係者ですが、本人の個人情報を無断で伝えてよい相手ではありません。
そのため、窓口を1人に決めます。複数の人が別々に答えると、話が食い違います。
そのうえで、答える範囲もあらかじめ決めておきます。事実として確定していないことは答えません。
内定取消を減らすために内定通知を見直す
取消が起きるたびに、内定通知の書き方を見直す材料になります。
よくあるのが、条件を書いていないために後から困る形です。
- 卒業が入社の条件であること
- 提出書類に事実と違う記載があった場合の扱い
- 入社日と、変更があるときの連絡
- 健康診断の結果による扱い(書き方は専門家に確かめる)
これらを内定通知に書いておくと、双方の認識がそろいます。あとから説明するより、先に伝えるほうが摩擦が小さくなります。
ただし、書いておけば何でも取り消せるわけではありません。書いてあることと、実際に有効かどうかは別の話です。
内定通知の文面は、年に1回でも専門家に見てもらう価値があります。
内定取消と選考中止を混ぜない
言葉が近いので、社内で混ざります。
| 内定取消 | 選考中止 | |
|---|---|---|
| いつの話か | 内定を出したあと | 選考の途中 |
| 契約の状態 | 成立していると扱われる | まだ成立していない |
| 相手への影響 | 入社の予定が崩れる | 選考が終わる |
| 手続きの重さ | 重い | 軽い |
選考の途中で募集そのものを止める場合は、選考中止です。こちらは応募者への連絡だけで済みます。
ただし、選考中止でも早く伝えるところは同じです。相手は他社の選考を進めるかどうかを判断しています。
選考中止の連絡は選考中止の連絡にまとめてあります。
内定取消の記録を残す
件数が少ないぶん、記録が残らないまま人が替わります。
残すのは5つです。
| 残すもの | 後で使う場面 |
|---|---|
| 内定を出した日と内容 | 何を取り消したかの特定 |
| 取消を決めた日と決めた人 | 社内の手続きの証拠 |
| 専門家に確かめた記録 | 判断の根拠 |
| 本人へ伝えた日時と方法 | 手順を踏んだことの証拠 |
| 通知書の写しと発送の記録 | 届いたことの確認 |
3つ目を残している会社は多くありません。相談した日と、相談先と、受けた助言の要点。1行で足ります。
これらを1つのつづりにまとめておくと、あとから照会が来たときに探さずに済みます。
保存の期間は、他の採用の書類と同じ扱いにします。応募書類の保管期間にまとめてあります。
内定取消が起きたら採用計画を組み直す
1人分の席が空いた状態になります。
そのまま追加募集をかけるか、次の期に回すか、体制を変えるか。判断が要ります。
とくに新卒の場合、時期によっては追加の採用が難しくなります。早い段階で判断するほど、選べる手が多くなります。
| 判断 | 見るところ |
|---|---|
| 追加募集をかける | 時期。残っている候補者。人材プール |
| 次の期に回す | 現場が回るか |
| 中途で埋める | 予算。求める経験 |
1つ目では、過去に見送った候補者に連絡する手もあります。人材プールを作っていれば、そこから声をかけられます。
作り方は人材プールの作り方、計画の組み直しは採用計画の立て方にまとめてあります。
判断を先送りにしないことが、いちばん効きます。
よくある質問
- Q. 内定取消は自由にできますか。
- できません。内定は労働契約が成立した状態として扱われるため、取消は契約の解約にあたります。有効かどうかは個別の事情で判断されるので、進める前に社労士や弁護士に確かめます。
- Q. 内定取消通知書には何を書きますか。
- 宛名・日付・会社名と代表者名・どの内定を取り消すのかの特定・取消の理由・問い合わせ先の6つです。「先般の採用内定」ではなく、いつ出した内定かを日付で特定します。
- Q. 理由はどこまで書きますか。
- 評価の言葉ではなく、事実で書きます。何が起きたのか、どの条件を満たさなかったのか。判断に迷う場面では、書き方も含めて専門家に確かめてから出します。
- Q. 書面だけ送ってもよいですか。
- 先に電話で伝えて、書面を送ることと届く時期を説明する順が一般的です。書面がいきなり届くのは、相手にとっていちばん厳しい形になります。電話で伝えた内容も記録に残します。
- Q. どの方法で送りますか。
- 届いた記録が残る方法にします。特定記録郵便や書留で足りることが多くなります。争いが見込まれる場合は内容証明郵便を検討します。発送の日付・方法・追跡番号まで残します。
- Q. 本人から説明を求められました。
- 答える窓口を1人に決めておきます。複数の人が別々に答えると話が食い違います。金銭の話になったら、その場で答えずに専門家に確かめます。
- Q. 学校や紹介会社から問い合わせが来ました。
- 本人の個人情報を無断で伝えてよい相手ではありません。答える範囲をあらかじめ決めておき、事実として確定していないことは答えません。
- Q. 本人から辞退を申し出られた場合も取消ですか。
- 違います。会社が取り消すのではなく、辞退の受理として扱います。書面の種類も別になります。ここを混ぜると、記録の上で会社都合の取消として残ってしまいます。
- Q. 選考中止とは何が違いますか。
- 内定を出したあとか、選考の途中かの違いです。選考中止はまだ契約が成立していないので、応募者への連絡だけで済みます。ただし、早く伝えるところは同じです。
- Q. どんな記録を残しますか。
- 内定を出した日と内容、取消を決めた日と決めた人、専門家に確かめた記録、本人へ伝えた日時と方法、通知書の写しと発送の記録の5つです。3つ目を残している会社は多くありませんが、判断の根拠になります。
- Q. 取消のあと、採用計画はどうしますか。
- 追加募集をかけるか、次の期に回すか、中途で埋めるかです。新卒は時期によって追加が難しくなるので、早く判断するほど選べる手が多くなります。過去に見送った候補者へ声をかける手もあります。
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