採用の事務

労働者名簿の書き方|必須の9項目・履歴の範囲・保存期間まで

公開 2026-10-10 執筆 採用板 編集部
採用板 編集部法令の原文と省庁の資料で確認:2026年10月10日

人を雇ったら作る書類の1つに、労働者名簿があります。賃金台帳・出勤簿と並んで、昔から「法定三帳簿」と呼ばれてきたものの1つです。

書く項目は条文で決まっていて、9つです。ただ、履歴をどこまで書くか、退職の理由をどう書くかは、条文に細かく書かれていません。そのため、会社ごとに書き方がばらつきます。

この記事では、労働者名簿の書き方を順にまとめます。必須の項目、履歴の範囲、退職の事由、訂正のしかた、保存期間の順です。入社の手続きの中で自然に埋まる形にするのが、いちばん続く方法です。

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この記事の内容(10項目)

労働者名簿とは何か、誰の分を作るのか

労働者名簿は、労働基準法107条で作ることが決められている名簿です。

条文では、会社は事業場ごとに、働く人それぞれの名簿を作り、決められた事項を書くこととされています。除かれているのは「日日雇い入れられる者」(=日雇いの人)だけです。

そのため、正社員だけでなく、パートやアルバイト、契約社員も名簿に載せます。週に数日だけ働く人でも、日々雇い入れる形でなければ対象です。

もう1つ大事なのが「事業場ごと」という点です。本社でまとめて管理していても、支店や工場ごとに分けて出せる形にしておきます。労働基準監督署から見せてほしいと言われるのは、その事業場の名簿だからです。

多くの会社では、入社のときに集める書類から名簿を作ります。書類の集め方は入社書類の回収にまとめてあります。

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労働者名簿の必須項目は9つ

書く項目は、労働基準法107条と施行規則53条で決まっています。

労働者名簿に書く9つの項目
書く項目根拠補足
氏名法107条
生年月日法107条
履歴法107条範囲は条文に無い
性別規則53条1号
住所規則53条2号
従事する業務の種類規則53条3号常時30人未満なら不要
雇入の年月日規則53条4号
退職の年月日と事由規則53条5号解雇はその理由まで
死亡の年月日と原因規則53条6号
図:法律で3つ、施行規則で6つ。退職と死亡は日付と理由を組で書く

前の3つは法律そのものに、あとの6つは施行規則に書かれています。施行規則が示す様式第19号も、この9つの欄でできています。

見落としやすいのは、退職と死亡の欄です。日付だけでなく、事由や原因まで書く欄になっています。在籍中は空欄で構いません。ただ、退職したときに日付だけ入れて終わりにしないようにします。

逆に、条文に無い項目は、名簿の必須項目ではありません。電話番号、緊急連絡先、マイナンバーなどです。社員台帳として同じ表に入れる会社もありますが、そのぶん扱う人を絞る必要が出てきます。

履歴はどこまで書けばよいか

いちばん迷う欄です。条文には「履歴」とあるだけで、どこまで書くかは決まっていません。

実務でよく見かけるのは、次の2つを書く形です。

  • 入社前の経歴。前の勤め先と仕事の内容、最終学歴など
  • 入社後の社内の経歴。部署の異動、職種の変更、役職の変化など

入社前の経歴は、履歴書や職務経歴書から写せます。全部を写す必要は無く、どんな仕事をしてきた人かが分かる程度で足ります。

入社後の経歴は、書き忘れが多いところです。異動の辞令を出したときに、名簿にも1行足す手順にしておくと続きます。

大切なのは、会社の中で書く範囲をそろえることです。人によって細かさが違うと、あとから見返したときに比べられません。「前職は最近の2社まで」「社内は異動と職種の変更」のように決めておきます。

応募のときに受け取った履歴書の扱いは応募書類の保管期間にまとめてあります。名簿に写したあとの原本をどうするかも、あわせて決めておきます。

従事する業務の種類と、30人未満の事業場

「従事する業務の種類」は、書かなくてもよい場合があります。施行規則53条2項で、ふだん30人未満の人を使う事業では省けるとされています。

ただし、書いておくと便利な欄です。配置の確認や、資格が要る業務をつかむとき、異動の記録などに使えます。ほかの書類を探さずに済みます。

書き方は、社内の職種名で構いません。「施工管理」「一般事務」「配送ドライバー」のように、何の仕事をしている人かが外の人にも分かる言葉にします。

30人をこえるかどうかは、事業ごとに見ます。人が増えて30人をこえたときに、急に全員分を埋めるのは大変です。小さいうちから書いておくと、境目を気にせずに済みます。

業務の内容は、募集のときに示した内容と食い違わないようにします。募集の段階での書き方は募集要項の書き方にまとめてあります。

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退職の事由の書き方と、解雇のとき

退職の欄には、年月日と事由を書きます。施行規則53条1項5号は、退職の事由が解雇のときは、その理由も含めるとしています。

事由の書き方は、次のように分けておくと迷いません。

  • 自己都合による退職
  • 契約期間の満了
  • 定年
  • 会社都合による退職(退職勧奨など)
  • 解雇(理由:◯◯)

解雇のときに「解雇」とだけ書くのは足りません。どういう理由での解雇かまで書きます。離職票や退職証明書と食い違わないよう、同じ言葉を使います。

また、退職した人の行は消しません。名簿は退職のあとも保存が求められる書類です。在籍者だけの一覧が欲しいときは、絞り込みで見る形にします。

入社してすぐ辞めた人も、名簿に残します。早く辞めた理由は、次の採用に生かせる情報でもあります。聞き取りの残し方は早期離職の原因にまとめてあります。

書いた内容が変わったら、遅れずに直す

書いた事項が変わったときは、遅れずに直す必要があります。労働基準法107条2項の決まりです。

よく変わるのは、住所と業務の種類です。引っ越しは本人から届けが出るので、その届けを受け取った日に名簿も直す手順にします。

変更を名簿に反映する流れ
本人から届け住所・氏名の変更など
›
名簿を直すその日のうちに
›
訂正日を入れるいつの情報か分かる
›
古い値を残す備考に旧住所など
図:届けを受けた日に直し、直した日と古い値を残す

直した日を残しておくと、その名簿がいつの時点の情報かが分かります。古い値を上書きして消すと、前にどこに住んでいたかが追えなくなります。備考に残しておくと安心です。

氏名が変わったときも同じです。給与や社会保険の手続きと同時に名簿を直すと、書類どうしの食い違いが起きません。

労働者名簿の保存期間と、数え始める日

労働者名簿は、労働基準法109条で5年間とっておくこととされています。ただし、143条の経過措置(=新しい決まりに移るまでの、一時的な扱い)で、当分の間は「3年間」と読み替えます。

労働者名簿の保存期間
本則(109条)
5年退職・死亡・解雇の日から
当分の間(143条)
3年経過措置
図:本則は5年、経過措置で当分の間は3年

数え始める日は、施行規則56条1項1号で「労働者の死亡、退職又は解雇の日」とされています。つまり、在籍している間は保存期間が始まりません。10年勤めた人の名簿は、在籍の10年と、退職後の期間をあわせて残ることになります。

3年で捨てるか、5年残すかは、会社で決めておきます。迷うなら5年で持つのが分かりやすい方法です。将来、経過措置が終わったときに慌てずに済みます。

保存期間を過ぎた行を消すときは、まとめて年に1回にします。退職日から自動で期限が出る形にしておくと、どの行が消せるかがすぐ分かります。

様式第19号と、Excelで労働者名簿を作るとき

施行規則53条は、労働者名簿の書式として様式第19号を示しています。1人につき1枚で、9つの項目の欄が並んだ形です。

一方で、施行規則59条の2は、こうした様式は必要な事項の最少限度を示すものとしています。横書き・縦書きなど、違う形を使ってもかまいません。

つまり、9つの項目がそろっていれば、1人1行の一覧表で作っても構いません。人数が増えるほど、一覧のほうが探しやすく、書き漏れも見つけやすくなります。

また、施行規則55条の2では、労働者名簿を賃金台帳や、年次有給休暇の管理簿とあわせて作ってよいとされています。社員番号を共通にしておけば、3つの帳簿を同じ人でつなげます。

紙の様式で作るか、Excelで作るかは、人数と手間で選びます。どちらでも、監督署に見せられる形で、すぐ出せることが大切です。

Excelで作るときは、列の名前を条文の言葉にそろえておくと、確認のときに説明しやすくなります。「退職の事由」の列を「退職理由」と縮めても構いません。ただ、解雇のときに理由まで書く欄だと分かる名前にしておきます。

労働者名簿でよくある書き間違い

監督署の調査や、社内で名簿を見直したときに見つかりやすい形は、だいたい決まっています。

  • 退職者を消している。在籍者だけの名簿にしてしまい、保存期間中の人が残っていない
  • 住所が入社時のまま。引っ越しの届けは受けたのに、名簿は直していない
  • 雇入年月日が内定日になっている。実際に働き始めた日ではなく、内定を出した日を書いている
  • パートの分だけ別の表にある。正社員の名簿にパートが載っておらず、全員分がそろわない
  • 履歴が空欄。何を書けばよいか決めていないので、誰も埋めていない

どれも、作ったときには正しかった名簿が、時間とともにずれていく形です。年に1回、住所と業務の種類を本人に確かめる機会を作ると、ずれを小さく保てます。

また、雇用形態ごとに別の表を持つと、全員分を出すときに集める手間がかかります。1つの表に全員を載せ、雇用形態は列で分ける形がおすすめです。

労働者名簿を入社の手続きに組み込む

名簿が続かない会社に多いのは、名簿づくりが入社の手続きと別の作業になっている形です。

名簿を埋めるタイミング
タイミング名簿でやること
内定のあと履歴書から氏名・生年月日・履歴を写す
入社書類を受け取ったとき住所を本人の書類で確かめて書く
入社日雇入年月日と業務の種類を書く
異動・住所変更のとき訂正して訂正日を入れる
退職のとき退職年月日と事由を書き、保存期限を確かめる
図:入社から退職まで、いつどの欄を埋めるか

こうして分けると、1回の作業は数分で終わります。入社準備のチェック表に「名簿に追加」の行を1つ入れておくだけでも、抜けがかなり減ります。

受け入れの準備全体は入社受け入れの準備にまとめてあります。名簿は、その中の1つの作業として扱うのがいちばん続きます。

最後に、名簿は個人情報のかたまりです。ファイルを開ける人を絞り、印刷したものは鍵のかかる場所に置きます。

採用板 編集部がまとめました様式を無料で配り、使い方と法令の決まりを記事にまとめています。法令の数字は e-Gov の原文で確かめてから載せています。

よくある質問

Q. 労働者名簿の必須項目はいくつですか。
9つです。氏名・生年月日・履歴(労働基準法107条)と、性別・住所・従事する業務の種類・雇入の年月日・退職の年月日と事由・死亡の年月日と原因(施行規則53条)です。
Q. 履歴には何を書きますか。
条文に範囲は書かれていません。入社前の経歴と、入社後の異動や職種の変更を書く形がよく使われます。会社の中で書く範囲をそろえておきます。
Q. 保存期間はいつから数えますか。
労働者の死亡・退職・解雇の日からです(施行規則56条)。期間は5年で、経過措置により当分の間は3年とされています。
Q. アルバイトも名簿に載せますか。
載せます。除かれているのは日日雇い入れられる人だけです。
Q. Excelで作ってもよいですか。
施行規則59条の2で、様式は必要な事項の最少限度を示すもので違う形でもよいとされています。9つの項目がそろっていれば一覧表で作れます。
Q. 30人未満の会社は何を省けますか。
従事する業務の種類です(施行規則53条2項)。ほかの8項目は人数にかかわらず書きます。
Q. 住所が変わったら、いつまでに直しますか。
労働基準法107条2項は「遅滞なく」訂正するとしています。届けを受け取ったその日に直す手順にしておくと確実です。
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本記事は一般的な業務の進め方を整理したものです。社内規程、契約条件、法令上の要件がある場合は、それらを優先してご確認ください。記事の内容は2026-10-10時点のものです。