採用担当の引き継ぎ|選考の途中を止めずに渡す
採用の担当が代わるとき、いちばん困るのは選考の途中にいる候補者です。前の担当が口頭で約束したことや、次に何をする予定だったかが、頭の中にしかないことがあります。
一般には、候補者ごとの状態、約束したこと、契約と権限の3つを渡す形が採られています。この記事では、採用担当の引き継ぎを、引き継ぐ単位から約束の洗い出し、候補者への連絡までの順に整理します。
この記事の内容(9項目)
- 引き継ぎで抜けるのは「約束」
- 約束は書き出さないと出てこない
- いちばん急ぐのは、返事を待たせている人
- 引き継ぐ単位を4つに分ける
- 1. 選考中の人
- 2. 掲載中の募集
- 3. 外部との約束
- 4. 権限と場所
- 選考中の人を1人ずつ渡す
- 「次にすること」を動作で書く
- 伝えた条件は、書面と口頭を分ける
- 連絡の履歴は表から見られる形にする
- 候補者へ担当の変更を伝える
- 伝えるのは3つ
- 可能なら、前の担当の名前で出す
- 内定者にも伝える
- 引き継ぐ人がいないとき
- いったん上長に渡す
- 止める判断も引き継ぎのうち
- 普段から属人化を減らす
- 応募書類と個人情報を渡す
- 前任の個人メールがいちばん残る
- この機会に、保管期間が過ぎたものを処分する
- 権限は「付けてから外す」
- 引き継ぎにかける時間
- 後任が質問できる期間を残す
- 後任が書き足す欄を作る
- 引き継いだ側が最初にやること
- 最初の1週間で信用が決まる
- 前のやり方をすぐ変えない
- 分からないことは候補者に聞かない
- よくある質問
引き継ぎで抜けるのは「約束」
資料やファイルは渡せます。抜けるのは、前の担当が候補者や社内に口頭でした約束です。
| 渡しやすいもの | 抜けやすいもの |
|---|---|
| 採用管理表、応募書類 | 「来週ご連絡します」と言った候補者 |
| 掲載中の求人と媒体 | 面接官に口頭で押さえてもらった枠 |
| 紹介会社の契約書 | 紹介会社に「この条件で探して」と伝えた内容 |
| 予算の残額 | 発注したが請求書がまだ来ていないもの |
| 選考フローの資料 | この募集だけ例外にした運用 |
約束は書き出さないと出てこない
「何か引き継ぐことはありますか」と聞いても、本人は思い出せません。候補者の一覧を見ながら、1人ずつ「この人に何を言いましたか」と聞くと出てきます。
いちばん急ぐのは、返事を待たせている人
引き継ぎの中で最優先は、こちらからの連絡を待っている候補者です。ここが止まると、そのまま辞退につながります。採用管理表の次回予定日で並べ替えると、待たせている人が上に集まります。並べ替えの使い方は採用管理表の作り方にまとめています。
引き継ぐ単位を4つに分ける
引き継ぎを1枚にまとめようとすると、量が多すぎて読まれません。4つに分けて、急ぐ順に渡します。
1. 選考中の人
1人ずつ、いまの段階、次にすること、その期限、これまでに伝えたことを書きます。件数が多い場合も、選考中の人だけなら10人前後に収まります。
2. 掲載中の募集
どの媒体に、いつまで、どの条件で出ているか。自動更新の有無がいちばん抜けます。管理のしかたは求人票の管理にまとめています。
3. 外部との約束
紹介会社に伝えた要件、学校に約束した訪問や見学、媒体の営業と話した内容。相手のいる約束は、守られないと信用の話になります。
4. 権限と場所
媒体の管理画面のアカウント、採用メールの受信箱、応募書類の保管場所と鍵。アカウントの引き継ぎは、情報システムの担当と一緒にやってください。
選考中の人を1人ずつ渡す
引き継ぎのいちばんの中身がここです。1人1行で、次の項目を埋めます。
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 受付番号と氏名 | 採用管理表と対応させる |
| いまの段階 | 書類選考中/一次面接待ち/結果連絡待ち など |
| 次にすること | 具体的な動作で書く |
| 期限 | いつまでにやるか |
| これまでに伝えたこと | 約束した日程、伝えた条件 |
| 気をつけること | 連絡がつきやすい時間帯、在職中かどうか |
「次にすること」を動作で書く
「フォローする」では、次の人は何をすればよいか分かりません。「9月2日までに一次面接の結果をメールで連絡する」と書いてください。
伝えた条件は、書面と口頭を分ける
給与や勤務地について口頭で伝えたことがある場合、それを必ず書き出してください。次の担当が別のことを言うと、候補者は混乱します。
連絡の履歴は表から見られる形にする
何をいつ伝えたかは、連絡管理表に残っていれば引き継ぎ書に書き写す必要がありません。普段から記録しておくほうが、引き継ぎが軽くなります。記録のしかたは選考連絡の期限の決め方にまとめています。
候補者へ担当の変更を伝える
選考の途中で担当が代わる場合、候補者にも伝えたほうが親切です。知らないまま別の人から連絡が来ると、不安になります。
伝えるのは3つ
- 担当が代わること。理由は簡単でよい(異動、退職など)
- 新しい担当の名前と連絡先。次からどこへ連絡すればよいか
- 選考の状況は引き継いであること。最初から説明し直す必要がないと分かると安心します
可能なら、前の担当の名前で出す
前の担当がまだ在籍しているなら、その人の名前で「担当が代わります」と連絡するほうが、候補者にとって自然です。いきなり知らない人から来ると、別件と思われることがあります。
内定者にも伝える
内定が出て入社を待っている人にも、担当の変更は伝えてください。入社までの間にいちばん連絡を取る相手が変わるので、知らせないと不安の原因になります。フォローの続け方は内定者フォローのやり方にまとめています。
引き継ぐ人がいないとき
採用担当が1人しかいない会社では、引き継ぐ相手が決まっていないことがあります。この場合でも、やることは変わりません。
いったん上長に渡す
後任が決まっていなくても、選考中の人を宙に浮かせないでください。上長や総務の責任者に、選考中の人の一覧と次にすることを渡します。後任が決まったら、そこから改めて渡します。
止める判断も引き継ぎのうち
後任が決まるまで選考を進められない場合、候補者に状況を伝えて、待ってもらうか、いったん見送るかを決めます。連絡しないまま放置するのがいちばん避けたい形です。伝え方は選考中止の連絡のしかたにまとめています。
普段から属人化を減らす
引き継ぎが大変になるのは、普段の記録が頭の中にあるからです。採用管理表と連絡管理表を普段から埋めていれば、引き継ぎ書に書くことは大きく減ります。
応募書類と個人情報を渡す
引き継ぎでは、応募者の個人情報を含む書類とデータが移ります。移すだけでなく、前の担当の手元から消すところまでやってください。
| 対象 | やること |
|---|---|
| 紙の応募書類 | 保管場所と鍵を渡す。持ち出している分が無いか確認する |
| 共有フォルダ | 権限を後任に付ける。前任の権限を外す |
| 採用メールの受信箱 | 後任がアクセスできるようにする。転送設定を見直す |
| 個人のメールに届いた応募 | 後任へ移してから、前任の手元から削除する |
| 印刷して配った書類 | 面接官から回収する |
前任の個人メールがいちばん残る
採用専用のアドレスを使っていない場合、応募書類が担当個人のメールボックスに残ります。異動や退職の前に、移して消すところまでやってください。扱いの考え方は応募書類の保管と返却にまとめています。
この機会に、保管期間が過ぎたものを処分する
引き継ぎは、たまった書類を整理するよい機会です。処分予定日が過ぎているものを、この機会にまとめて処分してください。後任に不要な書類を渡さずに済みます。
権限は「付けてから外す」
先に前任の権限を外すと、その間アクセスできる人がいなくなります。後任に付けてから、前任を外してください。
引き継ぎにかける時間
引き継ぎは、まとめて1回やるより、選考中の人を見ながら2回に分けるほうが抜けません。
| 回 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 1回目 | 1時間 | 選考中の人を1人ずつ。表を見ながら口頭で補う |
| 2回目 | 30分 | 掲載中の募集、外部との約束、権限と場所 |
| その後 | 随時 | 後任が困ったときに聞ける状態を1か月保つ |
後任が質問できる期間を残す
引き継ぎの直後より、1週間後、2週間後に質問が出てきます。前任がまだ在籍しているなら、1か月は聞ける状態にしておいてください。退職の場合は、上長が受けられる形にします。
後任が書き足す欄を作る
引き継ぎ書に、後任が「聞いたこと」を書き足せる欄を作っておくと、次にまた担当が代わるときの引き継ぎ書になります。作り直す手間が減ります。
引き継いだ側が最初にやること
引き継ぎを受けた側は、渡された資料を読む前に、選考中の人を確認します。
- 採用管理表を、次回予定日で並べ替える。期限が過ぎている人がいないかを見ます
- 期限が過ぎている人に、その日のうちに連絡する。遅れの謝罪と、次の予定を伝えます
- 掲載中の媒体を全部開く。採用が決まった募集が出たままになっていないかを見ます
- 予算の残りを確認する。発注済みで請求が来ていないものがないかを聞きます
最初の1週間で信用が決まる
担当が代わった直後に連絡が止まると、候補者から見れば会社の問題です。誰が担当かは関係ありません。最初の1週間で、待たせている人を全員片付けてください。
前のやり方をすぐ変えない
引き継いだ直後にやり方を変えると、選考中の人の扱いが途中で変わります。いま進んでいる募集はそのままの形で終わらせて、次の募集から変えてください。
分からないことは候補者に聞かない
「前回どこまでお話ししましたか」と候補者に聞くのは避けてください。引き継ぎができていないことが伝わります。社内で確認してから連絡します。
よくある質問
- Q. 採用担当の引き継ぎで、いちばん抜けやすいのは何ですか?
- 前の担当が口頭でした約束です。候補者に「来週ご連絡します」と言った件や、面接官に口頭で押さえてもらった枠は、資料には残りません。候補者の一覧を見ながら1人ずつ「この人に何を言いましたか」と聞くと出てきます。
- Q. 選考の途中で担当が代わることを、候補者に伝えるべきですか?
- 伝えたほうが親切です。担当が代わること、新しい担当の名前と連絡先、選考の状況は引き継いであることの3つを伝えてください。前の担当がまだ在籍しているなら、その人の名前で連絡すると自然です。
- Q. 後任が決まっていない場合、どうすればよいですか?
- いったん上長や総務の責任者に、選考中の人の一覧と次にすることを渡してください。選考中の人を宙に浮かせないことが最優先です。進められない場合も、候補者に状況を伝えて、待ってもらうか見送るかを決めます。
- Q. 引き継ぎにはどのくらい時間をかけるべきですか?
- 1回目に1時間で選考中の人を1人ずつ、2回目に30分で募集と権限、が目安です。加えて、前任がまだ在籍しているなら1か月は質問できる状態にしておいてください。質問は1週間後、2週間後に出てきます。
- Q. 引き継ぎを受けた側が、最初にやることは何ですか?
- 採用管理表を次回予定日で並べ替えて、期限が過ぎている人にその日のうちに連絡してください。担当が代わった直後に連絡が止まると、候補者から見れば会社の問題です。誰が担当かは関係ありません。
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